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柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

2018/06/27

 2度もリードを許したものの、2-2と引き分けに持ち込んだセネガル戦後。取材エリアにキャプテンの長谷部誠と大迫勇也の姿はなかった。ともにドーピング検査が長引き、ベースキャンプ地へ向かうチャーター機の離陸時間が迫ったことで、取材対応をしなかったからだ。

 そんなミックスゾーンで最後まで取材に応じていたのが、柴崎岳だった。

柴崎岳(スペイン・ヘタフェ所属) ©JMPA

あの夜、日本代表は柴崎のチームだった

 守備陣と攻撃陣とを繋ぐ、ボランチというポジションでプレーした柴崎は、攻守に渡りチームを牽引した。この日の日本のMVPを挙げるなら、得点した乾貴士でも本田圭佑でもなく、柴崎だろう。最初の得点ではピッチ中央から長友佑都へ長いパスを出し、そこから乾の得点が生まれた。ほかにも相手ボールを奪い、何本も決定機を演出する縦パスを送っている。この夜、日本代表は柴崎のチームだったと言っても過言でない。しかし、いやだからこそ、彼に満足感はなかった。

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「悔しいですね。 勝てるゲームだったと思いますし、その可能性も十分にあったので残念です。失点は防げたと思いますし、得点も多くチャンスを作り出せたので、決めきらなければならない。攻守両方にゴール前での精度をもう少し上げなきゃいけない。僕自身、ボールを触る回数が少なかった。それでも、セカンドボールを拾うところはある程度できたと思います。チームの二次攻撃に繋がるプレーもできたかなと思います。ゴール前に迫る回数が徐々に増えてきていると思うので、そこは継続してやっていきたい。自分に対して、もっとできるだろうという気持ちが強い。納得していない部分が強い」

柴崎の縦パスがコロンビア戦での乾のゴールにつながった ©JMPA

 自身のプレーや試合内容を振り返る。試合前日の取材では、「僕のパフォーマンス次第だと思います」と自身が担うモノの大きさを自覚し、それに見合う仕事ができるという自信をのぞかせた。

 そんな柴崎の姿に、「メディア嫌い」と噂されたこともある鹿島アントラーズ時代の面影はなかった。1年半のスペインでの時間が彼を変えたのだろうか。不甲斐ない試合をしたときはもちろん、どんなに活躍しても、その発言はわずかなものだった。今も寡黙な一面は変わらないが、自身の感情やプレーについて、丁寧に語る姿は、当時の柴崎を取材していた人間にとって、驚きでもあった。