女性客だけでなく、セラピスト志望の男性をも搾取する構造
女風店の検索サイトを見ると、出張ホストと見間違うような派手な装いの面々がまず目に入ることが多い。普通の主婦たちをターゲットにする店と出張ホスト系を揃えて搾取に振り切る店とでいま、業界は二極化しているという。
短期間でリピートさせて売り上げを増やすこと自体はそれほど難しくはないという。営業メールをバンバン送り、恋心に乗じて女性をマインドコントロールすればいい。
出張ホスト系のセラピストは本番行為をしたり、女性に料金以上のカネを貢がせている人もいるという。女性から大金を搾取するホストクラブのようなスタイルの女風店が蔓延る現状に、あす香さんはやりきれぬ思いを抱えている。
そして搾取の魔の手は、実は女性客だけでなく男性にも向けられている。「女風セラピスト」という華やかな舞台につられて、「女性客とエロいことをしてカネまで貰える」と甘い気持ちで応募してくる男性もいるという。しかし面接をするにも時間とエネルギーがかかるし、セラピストの採用ハードルは想像以上に高い。
それならいっそのこと面接料や指導料、登録料という名目でセラピスト志望の男性からもカネを取ってしまえ――そんな店があるのだとあす香さんは搾取の構造を語った。
こうした男の欲望を逆手にとった手口は使い古されたものだが、なぜいま女風業界に再び現れたのか。
近年は女風の存在が広く認知され、セラピスト希望の男性がひっきりなしに応募してくる状況で、「ウチですら月に数十人の応募がある」とあす香さんは言う。
流れを読み解くもう1つのカギは男性用の風俗と女風業界の「慣例」の違いだ。
男性向け風俗店は、商品である風俗嬢をより多く揃える――出勤人数を増やすことを経営戦略の基本としている。そのため面接をするだけでも「交通費」名目でお店側が1万円前後のカネを払い、とにかく採用を増やそうとする店も少なくない。
一方で女風は、男性セラピストの容姿スペックの要求が高いことはもとより、接客や性感マッサージのスキルも必要とされ、講習もある。女風では、その費用をセラピスト応募者が負担することが当たり前になっているのだ。
面接会場費や指導料として実費がかかり、『SPA White』であっても3万円かかる。なかには面接にこぎつけるだけで10万円以上もかかる店もあるという。
しかし大枚を叩けど、採用されるのは一握りの人間だけだ。
「女風は、真面目にやればやるほど儲からない商売です。稼ぎたいのならデリヘルの方が手取り早い。でもいまは女風がブームだから、そんな事情を知らない経営者まで参入してくる。費用の高騰は、思ったほど稼げない経営者たちの焦りの現れでしょう」(あす香さん)
それでも男性志願者が引きも切らないのは「女風でカネも下心も満たせる」と思ってしまうからか。ブームの裏にある業界の闇を見た気がした。
