女風(じょふう)――言わずと知れた女性用風俗の略称である。

 男性セラピストが写真とメッセージを女風店のホームページに掲載し、リラクゼーションや性的な満足を求める女性が好みのセラピストを選んで利用するのが一般的なシステムだ。

 コミックエッセイ『真・女性に風俗って必要ですか?~女性用風俗店の裏方やったら人生いろいろ変わった件~』(ヤチナツ/新潮社)が話題になり、後にドラマ化されるなど、いま女風が注目されている。その成り立ちを探った。

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 女風のはじまりは出張ホストだと言われている。出張ホストは、ホストのアフター(ホストクラブ営業終了後の客との店外デート)を商業化したもので、ホストクラブは1965年、東京駅八重洲口前にオープンした『ナイト東京』が起源とされているため、1960年代には「男性を買う女性たち」がいたことになる。

 2012年ごろには、出張ホストから派生して「レンタル彼氏」なる恋人代行サービスも生まれた。だがここでは、明確に「女性用風俗」と掲げた店だけを対象にしたい。

 1994年、東京・吉原に日本最古の女風『クイーン』が産声を上げた。ソープランド専門誌『ナンバーワンギャル情報』の元発行人で写真家の樹水駿さんはこう話す。

「『クイーン』はソープランド『クイーンアリス』の建物で時間帯を分けて併営していた店で、なんと経営者は女性。名称としては女性用風俗ではなく“逆ソープ”と謳っていました」

 1994年12月30日号の写真週刊誌『FRIDAY』に、その女性経営者が語る内情が記されていた。

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〈現在、在籍者は15名。大学生、サラリーマン、自営業と様々で、年は20歳から33歳まで。女性経験一人というウブなコからプロっぽいのまでいろいろです。お客さんにアルバムを見せて、好みのタイプを選んでいただきます。〉

〈泡風呂に入ってシャワーを浴びて、飲み物を飲んで、あとは女性のお客さんがどういう風にしてほしいか次第ですね。ベッドではお客さんにおまかせです。ずっとお話していてもいいですし。〉

「ソープ嬢でも吉原を歩くのは憚られるのに、一般女性にとって…」

「吉原のソープは当時、いまでいう朝キャバ・昼キャバのように既存の店舗を間借りして営業する店も少なくなかったんです。『クイーン』もそうでした」と樹水さん。

 流行っていたんですか、と聞くと、樹水さんは首を横に振った。

「1年も経たずに閉店しました。ソープ嬢でも吉原を歩くのは憚られるのに、一般女性にとってお店まで行くことのハードルは高い。時代が早過ぎたんだと思います」

 昔の地図を手にして現地に向かうと、仲之町通りから左右に伸びる脇道・角町通りの一角の『クイーンアリス』と地図に書かれている場所が、現在は駐車場になっていた。