しかし、そんな少年の発想のような企画を運営・演出するのは、元祖マルチタレントのやなせ先生なので、中学生の文化祭とはわけが違います。しかも、基本的にいつでも無料で招待してしまうのですから、大盛況にならないわけがありません。なお、世紀末イベントに関しては1999円99銭の会費が生じましたが、5000円相当のお土産がついてきました。
2001年にはミュージカル『涙のデュオ』を上演します。いつものように作詞作曲そして歌手も含め、あらゆる仕事を無償でやってしまいました。
このとき、やなせ先生はインフルエンザに罹患するも策を弄して強硬出演しています。その後、病院に行くと腸閉塞の診断が下り即入院しますが、なんと次の日には同ミュージカルに出演してしまいます。これを82歳でやってしまうというのは無謀な気もしますが、本人が楽しくて仕方がないのですから致し方ありません。聞こえてくる絶賛の声に対し「これがこたえられない」「これがもうメチャクチャうれしい」と喜びの声をあげています。
「人生は喜ばせごっこ」を信条にマジックショー
一方、こうして楽しくイベントを開催する間も病は進行していき、2005年からの2年間で10回も手術をしました。退院する際、看護師から「また、いらっしゃい」と声をかけられたやなせ先生は「二度と来るか」と応酬するものの、二度どころか幾度となく病院のお世話になることになります。そして入院中、やなせ先生は山のように積みあがった仕事をし続けたのでした。
退院後、全快祝いのパーティーをしたこともありました。ご承知のとおり、全快祝いとはお見舞いのお返しのことですが、「人生は喜ばせごっこ」を信条とするやなせ先生からすれば、形式ばったお返しをしても相手が喜ばないと思ったのでしょう。ここでもやはり、楽しくて仕方のないイベントにしてしまいます。
2001年に実施された全快祝いのテーマは「手術」で、その内容はマジックショーでした。それも、十円玉を移動しますといった素人マジックではなく、わざわざプロのマジシャンまで呼ぶという力の入れようです。
