酒井 そんな通達が来るんですね(笑)。
みうら 工場長に「みうらさん、たまに出されるみたいだけど、もう在庫ギリギリでやってるんで、もうあんまりしないでください」って言われたんですよ。
酒井 でも、したほうがいいという説もありますよね。すればするほど、製造側が張り切るみたいな。
みうら いや製造側の工場も劣化が激しくて、もうボロボロなんですよ。工場長も「できることなら引退したい」と。僕と同い歳なんでね。
酒井 継ぎ手が見つからないんですね。次世代継承っていうのが、今どの業界もすごく問題になっていますけど。
みうら ですよね。工場長は江戸っ子っぽいところがあって、「若い工員さんに引き継がれたらどうですか?」と相談しても「いや、一代限りで終わりたい」って。
酒井 じゃあ本当にギリギリのところで、工場長さんが好意で作ってくれているみたいな?
みうら そうですね。何年か前まで、工場長はいつも臨戦態勢にいて、業界用語では「筒が上がる」って言うんですけど、筒が上がったら工場長の号令と共に発射してたんです。でも、ここ数年は工場長が自分の部屋でじっといるようで、あんまり現場に出てこない。
酒井 「筒が上がる」って言うんですね(笑)。
友達のエロ話をさも自分の話のように書く
みうら 工場長もそんな感じだから、最近は僕自身のリアリティのあるエロ話は全然ないもんで、昔のエロ話を必死に掘り起こして「週刊文春」に「人生エロエロ」を書いているんです。
酒井 それでも毎週書いてらっしゃるのが、本当にすごいことです。
みうら 十何年も連載やっているんで、当然もう自らのネタなんてないです。だからあえて「エロの汚名を着る」気持ちで、友達のエロ話をさも自分の話のように書いてるってことですね。この手法、今までやる奴いなかったんです。
酒井 ということは、もう小説ですね。
みうら そうですね。コントと言ってもいいと思います。だから自分のことをエッセイストじゃなくて「コントスト」って呼んでるんですけど。

