酒井 髪は真っ黒なのにヒゲだけ白いって不思議……。ヒゲは男性ホルモンで、髪は女性ホルモンですよね。
みうら たしかに。面白いですね。でも、白いヒゲを生やしてると、年齢をあまり聞かれないと思うんです。山のてっぺんに住んでる仙人に「おいくつですか?」ってわざわざ聞かないじゃないですか。最近は僕も歳を聞かれなくなったし、聞かれて正直な年齢を伝えたら「えっ、意外と若いじゃないですか」って言われるんじゃないですかね。
酒井 多分ヒゲがないと、めちゃくちゃ若く見えますもんね。
みうら きっと若く見えて、自分もその若さに騙されていたと思うんです。でも、さっきの工場の話じゃないけれど、もう内部がかなりボロなのは自覚してますから。
酒井 そういう意味での老けづくりだったのか。
みうら 若づくりをしたって、もう諸行無常はしょうがないわけですから。しょうがないことに抗ってもしょうがないと思って。
みうらじゅん
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、 イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。1997年、 造語 「マイブーム」 が新語 ・流行語大賞受賞語に。 「ゆるキャラ」の命名者でもある。2005年、日本映画批評家大賞功労賞受賞。2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。著書に『アイデン&ティティ』 、 『マイ仏教』 、 『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著) 、 『 「ない仕事」の作り方』 (2021年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」に選出)など。音楽、映像作品も多数ある。
酒井順子(さかい・じゅんこ)
1966年、東京都生まれ。高校在学中から雑誌でコラムを連載する。大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念。2003年に発表した『負け犬の遠吠え』がベストセラーとなり、婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞。『ユーミンの罪』『子の無い人生』『百年の女』『駄目な世代』『男尊女子』『家族終了』『ガラスの50代』『女人京都』『日本エッセイ小史』『消費される階級』などの著書の他、『枕草子』(上・下)の現代語訳も手掛けている。

