このまま行けば(ちょっと古いが)「マー姉ちゃん」(79年)における田中裕子と並ぶ、「朝ドラ史上に残る3人姉妹の次女」になるのではないか(どことなく表情も似ているし)。
出てきてほしい時に出てきてくれる阿部サダヲ
2つ目は、阿部サダヲ演じる屋村の存在である。屋村は、このドラマ用の完全な創作、空想上の人物らしいが、その存在感が、作品のリアリティを損なう方向ではなく、むしろ、いい意味でのファンタジー性をトッピングする効果を発揮する。
土佐弁ではなく標準語をしゃべり、絶えず正論を述べ、さらには戦局へと向かう時勢に抗い、反戦的な発言や行動をも見せる。気が付けば毎回、「ここで出てこないかな」と、阿部サダヲの登場を願っている私がいる。太平洋戦争に突入する今後の展開の中、阿部の復活を願う回がしばらく続きそうだ(何とか生き延びていてほしいと思う)。
この2人、反戦(厭戦)的姿勢を感じさせる河合優実と阿部サダヲは、まるで、未来からやってきたキャラのようにも見えてくる。あっ、この2人、『不適切にもほどがある!』でタイムスリップする親子じゃないか!
主題歌は一見朝ドラらしくないが…
と、前置きが長くなったが、こういう中での主題歌「賜物」なのである。
開始当初、まず驚いたのは、「ザ・朝ドラ=戦前物」には、決して似つかわしくない派手派手しいディスコ風のアレンジである。さらには、タイトルバックも近未来的な映像世界だ(よく見ると戦前から現代、そして未来への移ろいを描いている)。
音楽評論家として、少々細かい話をすれば、メロディの音程の「跳躍」にびっくりした。
歌詞「♪人生訓と経験談と占星術または統計学による 教則その他、参考文献」(歌詞も何ともシュール)のパートは、音が、専門用語で5度(ミとラ。キーはBm)の幅を何度も行き来する。
さらに、続く「♪道理も通る隙間もないような日々だが 今日も超絶G難度(人生を)」のパートは、5度を超えて8度、つまりオクターブ(ラと上のラ)の広い幅を、何度もピョンピョンと跳びまくる。