永六輔、いずみたく、手塚治虫を誰が演じるのか、考えるだけでワクワクする。

長くなったが、私が言いたいのは、RADWIMPS「賜物」とタイトルバックは、やなせたかしの賑やかな戦後を描く「シン・朝ドラ」としての『あんぱん』への期待を喚起しているのではないかということだ。「待ってろよ、『ザ・朝ドラ』じゃ終わんないよ」とでもいうような。

あのリズム感、メロディの跳躍、近未来に向かっていく映像世界は、すべて「シン・朝ドラ」にふさわしい。逆にいえば、楽曲が「賜物」ではなく、「がんばれば夢は叶うよ」的なありがちな歌詞を、ありがちなコード進行(特に「カノン進行」)に乗せて歌うありがちなJポップ(実際、そんな主題歌は最近の朝ドラに多かった)だったとしたら……。

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その瞬間、「ザ・朝ドラ」として完結してしまうではないか――「そんなのはいやだ!」

子供向けらしくない「あの曲」との関係性

とはいえ「賜物」が、本作品の主題歌として満点、「オール5」の選曲だとは思わない。なぜなら、やなせたかし自身が作詞した「あの曲」があるからだ。

「♪そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ 胸の傷がいたんでも」――歌い出しは子供向け楽曲らしく、ポジティブなメッセージである。取る人が取れば「ありがちなJポップ」を想起するかもしれない。

ただ、子供向け楽曲には決して似つかわしくない「いやだ!」という否定の叫びが込められた次のパートが、中国戦線でタンポポの根っこを食べる嵩(北村匠海)、会社員、漫画家、美術担当、作詞家、絵本作家……と、忙しく賑やかに駆け回る嵩のバックに流れたとしたら、どうだろう。

――「♪なんのために生まれて なにをして 生きるのか こたえられないなんて そんなのは いやだ!」

テレビには流れない「最後のフレーズ」

もちろん「あの曲」を主題歌にすることなど、あり得ないのだが、それでも、ありがちなJポップではない果敢な曲調で、「あの曲」に果敢に挑戦したことを評価したいと思うのである。