ドラマ「あんぱん」でも、嵩は自分を捨てた登美子を決して憎まず、登美子を責めるのぶに対し「ずっとこの人に会いたかった」と母をかばい、「あの人の喜ぶ顔、見たくて」と高知第一高等学校を受験する奮闘する姿にそっくりだ。
ぼくはちっとも恨んでいなかった
また、やなせたかし自身も、「母」という詩の中で、母についてこう語っている。
母はずいぶん悪口をいわれた人でした
「お化粧が濃く派手好きで
自分の子どもを捨てて再婚した」
ぼくは母の悪口をいわれるのは
じつにいやでした
ぼくはちっとも恨んでいなかったのです
『やなせたかし詩集 てのひらを太陽に』(やなせたかし著/河出文庫より)
実はフランケンロボくんのモチーフとなっているフランケンシュタインも、アンパンマンと非常に深い関係がある。
「あんぱん」でも、銀座で嵩が健太郎と共にフランケンシュタインの映画を見て感動するシーンがあるが、やなせたかしも学生時代、銀座で見たフランケンシュタインの映画に感銘を受けたそうだ。
やなせたかしは、著作『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)の中で『フランケンシュタイン』の著者メアリー・ウォルストンクラフト・シェリーを「恋人」と呼ぶほど思いを募らせ、その肖像画をみるためにロンドンに旅行したエピソードを明かしている。
そして、アンパンマンを描く上で、フランケンシュタインから大きな影響を受けたと語っている。やなせたかしにとって、思い入れの強いフランケンシュタインがモチーフのフランケンロボくん。もしかするとやなせたかし自身、母への思いをこのキャラクターに投影させていたのかもしれない。
「あんぱん」制作陣の狙い通り
ばいきんまんは嫌われ者の悪役キャラ、というイメージが強いが、実はやなせたかし自身、ばいきんまんを完全な悪役として描いていない。
著作『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)で、ばいきんまんについてこう明かしている。
現在は新型肺炎(SARS)とか、鳥インフルエンザとか、バイキンが暴威をふるっていて人類共通の敵になっています。しかし酵母菌のようにパンをつくるときに必要な菌、納豆菌とか乳酸菌とか有用善玉菌も多いから、バイキンを絶滅させると人間も絶滅する。うまい具合にバランスが取れているのがいいわけです。