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だからアンパンマン対ばいきんまんの戦いはバランスを保ちながら永遠に続いていくことになります。
自分の欲望に忠実で、意地悪なばいきんまん。「あんぱん」制作陣は、紫の衣装で登美子とばいきんまんを重ね、あえて登美子が身勝手に見えるようにしていたのかもしれない。
それによって、毒母のように見えていた登美子の秘めた愛が爆発する、嵩の出征を見送るシーンを際立たせたかったのかもしれない。
戦争帰りのやなせたかしに母が言ったひと言
ドラマ「あんぱん」のネタバレになってしまうかもしれないが、先に紹介したやなせたかしの詩「母」は、こんな一節で締めくくられている。
戦争から帰ったとき
ぼくは母のひざまくらで
眠りました
熱いものが落ちてきたので
眼を覚ますと
母の顔がありました
「許してね」
母はひとこといいました
『やなせたかし詩集 てのひらを太陽に』(やなせたかし著/河出文庫)
息子を愛しながらも、素直にはなれない不器用な母。そして、そんな母を許し、まっすぐに愛したやなせたかし。「あんぱん」では、この先の嵩と登美子の関係がどう描かれていくのか、見守っていきたい。
市岡 ひかり(いちおか ひかり)
フリーライター
時事通信社記者、宣伝会議「広報会議」編集部(編集兼ライター)、朝日新聞出版AERA編集部を経てフリーに。 AERA、CHANTOWEB、文春オンライン、東洋経済オンラインなどで執筆。2児の母。
フリーライター
時事通信社記者、宣伝会議「広報会議」編集部(編集兼ライター)、朝日新聞出版AERA編集部を経てフリーに。 AERA、CHANTOWEB、文春オンライン、東洋経済オンラインなどで執筆。2児の母。
