「久保は、大きく変わったと思います」城彰二が感じた久保建英の“変化”

――新しい選手が出場機会を得るなか、長友(佑都)選手はインドネシア戦も唯一のベンチ外となり、これで昨年3月の北朝鮮戦以来、ベンチ外が続いています。

 長友の良さは、自分に求められているものを理解し、チームのムードを高めたり、ピッチの内外でいろんなことができること。インドネシア戦はピッチに出る前の選手のたまり場で、選手に声掛けをしていました。

 普通はベンチ外になったら、そこには行かないし、自分だったらやらないですよ。選手である以上、試合に出たいと思っているでしょうし、いろんな思いがあると思うけど、それを表に出さずに自分の役割を果たすのは、すごいなって思います。

ADVERTISEMENT

――W杯最終予選が終わりましたが、予選を通して成長した選手はいますか。

 久保は、大きく変わったと思います。以前は守備が出来ないと言われていたけど、今は守備の意識がすごく高くなりました。インドネシア戦ではプレスバックでボールを絡め取っていましたし、危ない所にも守備に走って、すぐに戻ってくるなど、とにかくサボらない。

 攻撃面でも自分ひとりでフィニッシュまでいけるようになっている。「下からの突き上げで危機感を覚えている」と言っていたけど、予選が始まった頃とは異なり、今はチームで抜きん出た存在の選手になっていると思います。

――何が久保を成長させたのでしょうか。

 欧州での経験も大きいけど、代表に対する責任感が増したからでしょう。今回で言えば、10番を背負い、キャプテンマークをつけてプレーしたのが大きいと思います。それが彼のモチベーションを高め、自分がリーダーになり、責任を持ってチームを引っ張っていかないといけないと思うようになった。森保さんの期待に応えたい気持ちも大きかったと思います。

――10番を背負い、キャプテンマークを巻くことで変わるものですか?

 選手は、意外と単純というか、シンプルだから、期待されると自分がやらなきゃって思うので、それがプレーに上積みされて出てくるもんなんです。久保には、今後もその意識で、チームを引っ張っていってほしいと思います。

キャプテンマークを巻いてチームを引っ張った久保建英 ©時事通信社

「オーストラリア戦は5バックの攻略に苦戦した」森保ジャパンが抱える“課題”

――最終予選の成績は7勝1敗2分け(30得点、3失点)でトップ通過。チームとしての成長は、どういうところに見えましたか。

 守備が洗練されて良くなったと思います。カタールW杯までは、守備は特に決まり事とかなくて、「大丈夫か」って思っていました。

 でも、カタールW杯以降は、例えば攻守の切り替えが非常に速くなり、カバーの意識、球際の厳しさなどが、主力から控え選手にまで浸透している。攻撃は水物だったりしますが、守備は確立されるとどんどん洗練されていくので、もっと良くなるはず。

 最終予選でアジアの国を圧倒することが出来たのは、30点を奪った攻撃よりも安定した守備があったからだと思います。

――逆に、W杯までの課題はありますか。

 オーストラリア戦は5バックの攻略に苦戦し、敗れました。メンバーをほぼ入れ替えた中での試合なので連携面で難しい所があったと思いますが、それにしても引いた相手に苦戦するのはカタールW杯のコスタリカ戦から変わっていない。

 あの時、スペインやドイツなど世界の強豪国は、普通に戦えば日本に勝てると思っていましたが、三笘薫や伊東(純也)の爆発力と日本の戦術の変化にハマって敗れた。

 でも、これからは「思うようにさせない」と日本対策をしっかりしてくる可能性が高い。今の日本代表は歴代で一番力があるチームだけど、5バックの崩しなど苦手とされているところに取り組み、もう1、2段階レベルを上げていかないとベスト8を達成するのは難しいと思います。

取材・文=佐藤俊