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「これは修行だ」2軍の球場、夏の猛暑の基礎知識

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/04
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 9勝15敗。6月のベイスターズはイマイチ波に乗り切れませんでしたね。交流戦を2つの負け越しでなんとか凌いだ形になったものの、交流戦が明けてからも中日に負け越し、阪神に3連敗。7月をまたいだ6月最後のカードで首位広島に勝ち越したことは、観測史上最速の梅雨明けに便乗するかのごとく、ベイスターズファンにとって朗報でした。

 低調だったベイスターズの一方、スワローズは15勝8敗と5月の時点で最大11あった借金をいつの間にか完済。セ・リーグの激戦を演出するどころか、一気に抜け出していきそうな勢いさえ感じます。1強で遥か彼方を走っている広島は一旦置いておきましょう。梅雨明けと同時に異常な暑さを感じますが、ここは“夏の筒香”が大爆発することに期待して、7月はベイスターズが話題の中心であることを願いましょう。

2軍の試合は暑さとの戦い

 さて、今日は2軍の話。突然ですが、プロ野球の2軍の試合って、どれくらい観たことがありますか? 普通に考えれば、2軍の試合を観たことある人の方が少ないと思います。そもそも、どこでやってるの? という声もたまに聞きます。なので、今日は2軍の基礎知識を簡単にご紹介したあと、夏の2軍の試合ならではの話をしましょう(と言っても、僕はウエスタン・リーグのことをほとんど知らないので、イースタン・リーグについての話だけです)。

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 まず、セ・リーグとパ・リーグに分かれるように、2軍はイースタン・リーグとウエスタン・リーグに分かれます。中日より西の5球団がウエスタンで、在京球団と楽天、日ハムを含んだ7球団がイースタンです。日ハムは千葉県の鎌ヶ谷市に2軍の施設を置いていますから、北海道まで遠征に行くことは基本的にはありません。在京球団のそれぞれの2軍の球場は、巨人が川崎(よみうりランド内)、ヤクルトが戸田(埼玉)、ロッテがロッテ浦和球場(戸田から車で15分)、西武が西武第二球場(所沢)、ベイスターズが横須賀スタジアム、楽天は泉(仙台)を中心に、利府、山形、天童市の球場を使用します。試合は基本的に13時からのデイゲーム。夏の炎天下、一番気温が高くなる時間にプレイボールです。2軍から上がってきた選手が真っ黒に日焼けをしているのは、いつもデイゲームをやっているからですね。基本的にナイターゲームで日焼けとは縁のない1軍選手とのコントラストが、一層日焼けを際立たせます。

 さてこの真夏のデイゲーム。これが大げさではなく、命がけです。真夏の所沢(西武戦)は風がほとんど吹かず、気温が上がり続けます。加えて、7回あたりからは、一塁ベンチは強烈な西日を真正面に受け、ベンチの中は蒸し風呂状態。ベンチの中に温度計が置いてありましたが、僕が記憶している一番暑い日は、温度計が48℃を示していました。そうそう、あれはちょうどその、信じられないような暑い日。当時の田代監督(現巨人2軍打撃コーチ)が、終盤でスクイズのサインを出しました。

 僕は監督の横に座っていましたから、サインを横目で見て、「あっ、スクイズだ」と思った瞬間、田代さんがフラッと倒れそうになったんですね。その瞬間、みんなが「田代さん! そのサインの時はダメ!」って言いながら倒れそうになる田代さんを支える体勢に。「おぉ、頭がボーッとしちゃってさぁ」と言ってる間にスクイズ成功。選手のみならず、監督やコーチも、炎天下で立ち続けているということは命がけです。

 確かあれはプロ4年目。7月30日からの3連戦で、所沢、上尾、熊谷という炎天下ツアーがありました。3連戦の締めくくりが、一年で一番暑い時期に、日本で一番暑い場所での試合。初日の所沢が38℃で、2日目の上尾で2人離脱(熱中症)。3日目の朝、「これは修行だ」と言い聞かせながら試合に向かったことをよく覚えています。ちなみにこの熊谷にはシャワーが1個しかなく、試合後はシャワーを浴びることなく横須賀まで3時間かけて帰りました。

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