『PLAN 75』の早川千絵監督の新作『ルノワール』が公開される。同作は今年のカンヌ映画祭でコンペティション部門に選出された話題作。受賞はならなかったが、観客からは大きな拍手をもって迎えられた。公開に合わせて、カンヌで行った早川監督のインタビューをお届けする。

『ルノワール』より ©2025『RENOIR』製作委員会 / International Partners

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 今年で78回目を迎えたカンヌ国際映画祭。長い歴史でコンペティション部門に参加できた日本人監督は限られるが、女性監督となるとさらに珍しい。これまで田中絹代(『恋文』)、河瀨直美(『沙羅双樹』『殯の森』他)がいたが、今年新たな名が加わった。前作『PLAN 75』でカメラドール(新人監督賞)の特別表彰を受けた早川千絵だ。

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 早川監督の長編第2作となる映画『ルノワール』は、11歳の少女フキ(鈴木唯)のひと夏の成長譚。周囲には管理職の母(石田ひかり)、病に冒された父(リリー・フランキー)、そして同級生や不思議な大人たちがいる。父の死期を感じながら、浮遊する思春期の心が映し出す世界とは。世界最高峰の映画祭が力量を認め、コンペの晴れ舞台を用意した早川千絵監督に現地で話を伺った。

カンヌでの会見 左から石田ひかり、鈴木唯、早川千絵監督、リリー・フランキー ©林瑞絵

彼女はいとも簡単にフキを演じてくれた

――日本人女性監督のコンペ入りは珍しいです。どのような気持ちで迎えましたか。

 すごく嬉しいというのと気が引き締まる思いがあります。やっぱりこの場に来るのには覚悟が要ったのですが、公式上映では思っていたよりリラックスして、みんなで温かい気持ちでいられたのがすごく良かったなと思います。

早川千絵監督 ©林瑞絵

――前作の主人公が70代の女性。今回は子供を描くという挑戦はいかがでしたか。

 ほぼ長編初主演の唯ちゃんを私が導いてあげないといけないだろうし、それは大きなチャレンジだと予想していました。でも蓋を開けてみたら、彼女はいとも簡単にフキを演じてくれて、撮影中は彼女に魅了されっぱなしでした。子供の演出に関しては、かなり楽をさせてもらったと思います。

――唯さんは一番最初にオーディションに来て、すぐにピンときたそうですね。どこにピンと来たのですか。

 私が言った通りにしないところとか(笑)。自分のぺースで話をしたり動いていたりと、それがとにかく魅力的で目が離せないのです。その一方ですごく気を遣って、空気を読むような所もあるんですよ。それが混じり合って不思議でいいなと思いました。フキの役も唯ちゃんに近づけることで、より豊かなフキ像のインスピレーションを彼女から受け、シーンも足されました。本当に幸運な出会いでした。