「小学生の25人に1人、中学生の10人に1人が不登校」と言われている、近年の教育現場。身近な子が不登校になってしまったとき、私たちに何ができるのか。

 40年以上にわたり、教育相談に携わってきた海野和夫さんの著書『不登校を克服する』(文春新書)より、不登校から立ち直った子どもたちの事例を抜粋して紹介する。(全3回の1回目/続きを読む

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19歳男子、対人恐怖の克服

 子どものときからすぐ顔が赤くなったり、人前であがったりした。学校でたくさん恥をかいたと思っていた。中学2年の夏、緊張ばかりで学級にいるのがつらくなり不登校になった。それから家に引き籠もって無業の5年、19歳のとき、ある心理職に出会った。

 それまで、登校を促した父親を殴り、たしなめる母親を蹴った。親にたくさんの怪我をさせた。新しい家の柱を2本、鋸で切った。

写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

 自分の部屋の壁を金づちで叩き壁を抜いた。外が見えるようになった。風がいっぱい入ってきた。父親は、柱はすぐ直したが、部屋の壁は直せと言っても直さなかった。父親の意地だと思った。自分も意地でそのままにしておいた。

 することがなく、昼眠り、夜起きて大音量で音楽を聞いたりした。最初、隣の家から苦情があったが、事情が分かったのか何も言われなくなった。何も言われなくなると、大音量をやめた。

 病院に行くことは拒否した。独りぼっち、孤独だった。そんな折、心理職が訪ねて来た。しかたなく会った。でもおもしろい話に興味をもった。定期的に心理職を訪ねることにした。