恩人から贈られた「易行往生」の書
その心理職に、大学進学を勧められて2年間、中学3年から高校3年までの5教科の勉強につき合ってもらった。また、「犯罪者になりたいのか。君(わが子)を犯罪者にしない親の気持ちを分かれ」と諭され、それまで繰り返していた親への暴力をやめた。
受験勉強のかたわら、1年間、学童保育で小学生に勉強を教え、子どもらとたくさん遊んだ。ドッジボールをし、ボールをひらりひらりとかわして、子どもたちに驚かれ拍手されたりもした。面映ゆくあったがうれしくもあった。
いつの間にか集団にいての怖さが薄れた。女の子も苦手でなくなった。21歳のとき、高校卒業程度認定試験を経て大学に入った。親に酷いことをしてきたと思った。心から詫びた。
心理職が自筆の「易行往生(もっと楽に生きよ)」(五木寛之)の書をくださった。心に刻み、人の助けになる仕事に就く。
このような事例に共通するのは不登校の子どもが人に出会い、「人(私が私)に成る」(松原泰道)契機を得たことである。それぞれ、その機会を生かし、悩み、考えて内的成長を遂げ、生きる意味を自覚できるようになったのである。その子なりの「静かな革命」(同前)でもあった。
*補足
不登校には、家庭内暴力が伴うことがよくある。その場合、軽く叩く、蹴る程度でも許してはならない。しかし、いらいら感が収まらず、暴力の学習を深めると深刻化する。子どもから逃げるか、第三者の介入が絶対的に必要である。
また、永続する暴力には、精神疾患の可能性がある。精神科医の指導や介入を必要とする。地域の精神保健福祉センターの力を借りるのも選択肢である。
