「政治空白を作りかねない」は言い訳だ
野田氏を逡巡させている要因は、米トランプ政権の関税交渉が佳境を迎えていること。今回のG7サミットでの石破首相とトランプ大統領との会談では合意できず、閣僚間で引き続き協議ということになった。立憲の最高顧問・枝野幸男氏は講演で「政治空白を作りかねないことを年中行事だからと言ってやるのは、無責任極まりない」「不信任案を出すべきだって言っている人は無責任極まりないか、外交を知らないかのどっちかだ」と語っているが、江田氏はこう喝破する。
「私が官邸や旧通産省で実際に交渉にあたった経験から言えば、通商交渉を含む外交交渉は、その権限や部署を有する政府の専権事項です。むしろ、政府に窓口を一元化して対応しなければ、相手国に足元を見られる。今回のG7での首脳会談では合意に至りませんでしたが、関税交渉は、総理大臣、担当大臣、その下で官僚が行うことであって、野党はおろか、与党の議員も関与できないし、すべきでもありません。この問題で政治空白を作りたくない、などというのは不信任決議案を出したくない言い訳であって、少なくとも野党の党首が言うべきことではないでしょう」
さらに言えば、と江田氏が続ける。
「2017年9月、故・安倍晋三総理は“国難突破解散”と言って、衆院を解散しています。当時、北朝鮮が核実験と弾道ミサイルの発射を繰り返し、トランプ大統領は、軍事オプションも辞さずとの姿勢を示していました。そんな安全保障上の危機的状況下で、時の総理大臣が解散に打って出ているのです。
我々野党は『こんな状況下で政治空白を作るのか』と批判しましたが、選挙戦が始まってみれば、自民、公明が国民の支持を得て、300議席を超える圧勝でした。この事実からも、関税交渉で政治空白を生むから不信任決議案を出さないという理屈は成り立ちません」
野田氏のいまだ煮え切らない姿勢は、参院選後に自公と立憲民主が“大連立”を組む布石ではないかとの憶測を呼んでいる。
「これまで『政権交代こそ、最大の政治改革』と訴えてきた野田代表が、その最大のチャンスを生む可能性のある不信任決議案を放棄すれば、別に政局的な意図があると勘繰られても仕方ありません。ただでさえ、年金制度改革関連法案で自公が立憲民主党の修正案を丸呑みして合意したことから、自公と立憲が大連立を組むのではないかと見る向きが増えている。
ここで不信任決議案を出さなければ、野田代表の真意はどうあれ、大事な参院選を前に大連立の憶測がより一層広がってしまう。参院選を闘う前から戦意喪失と批判されても仕方ないでしょう」
