当選することに汲々としている西側政治家の知的劣化は著しいものがあります。おそらく彼らは、〔その地位だけが理由で〕本を書くことはできても、本を読むことはできない。オルバンは読書家でした。彼が本から引用したすべてに同意したわけではありませんが、知的な会話が楽しめた。
印象的だったのは「小国を率いるリスク」について話してくれたことです。ハンガリーのような小国(人口約960万人)を率いる時には、独仏のような大国を率いる時と異なり、間違いを犯すことは決して許されないのだ、と。大国とちがって小国では、たった一つのミスが命取りになるのです。
ハンガリー国民の“自信”
翌日はブダペストの美しいホールで、「岐路に立つ欧州――国家主権とポピュリズム」というテーマの講演をしました。
ちなみにこの講演は、同行した妻が念のため録音してくれて、予定していなかったのですが、仏語と英語でネット上で全文公開しています。オルバンとの会談について、〈「リベラルでない民主主義」の実験場と化しているハンガリーのポピュリスト指導者が、人類学者で歴史家のトッドと対談した〉と、仏の『リベラシオン』紙が揶揄する記事を掲載したからです。
「国家主権(国家の自立)」の重要性――これは今日の日本にも喫緊の課題ではないでしょうか――を今日、国民レベルで最も理解しているのは、おそらくハンガリー人たちでしょう。欧州のなかで独立を保ち、東欧のなかで例外的に「ロシア恐怖症(嫌い)」に囚われていないのはなぜか。
本記事の全文(約10000字)は、「文藝春秋」7月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(エマニュエル・トッド「ロシア・ハンガリーより愛をこめて」)。

