〈あらすじ〉

 貧富の格差が社会問題化した21世紀、アメリカ共和国の大都市ニューローマ。市の都市計画局局長を務める天才建築家カエサル・カティリナ(アダム・ドライバー)は、自らが発明した新素材「メガロン」を用いた新都市「メガロポリス」の開発を進めていた。目指すのはすべての人が平等で幸せに暮らせる理想都市だ。

 しかし、新市長のフランクリン・キケロ(ジャンカルロ・エスポジート)とは意見が食い違い対立。2人の間に入ったのが市長の娘ジュリア(ナタリー・エマニュエル)だった。一方、カエサルの恋人で金融ジャーナリストのワオ・プラチナム(オーブリー・プラザ)は、カエサルの強力な後ろ盾で大富豪の伯父ハミルトン・クラッスス3世(ジョン・ヴォイト)に急接近。それぞれの思惑や策謀が渦巻く中、カエサルの身にも危機が迫り――。

〈見どころ〉

 古代と現代と未来が入り混じったような世界観、街並みを表現するためにコッポラ監督が信頼するベテランスタッフが集結。壮麗で圧倒的な映像美。

巨匠コッポラが構想に40年をかけた未来の理想都市をめぐる一大叙事詩

『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』で知られるコッポラ監督が、私財約186億円を投じて完成させた最新作。近未来のアメリカを古代のローマになぞらえ、その行く末を描く。カンヌ国際映画祭では大喝采を受けるも、その後の興行不振でも話題騒然のSF大作。

©2024 CAESAR FILM LLC ALL RIGHTS RESERVED 配給:ハーク、松竹
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆共和制ローマの崩壊とアメリカ合衆国の衰退を串刺しにしようとする野心的な試み。ゆるい語りと粘りを欠く細部描写が祟って、製作費1.2億ドル超、興行収入1400万ドルの惨敗を喫したが、どうしても憎めない。老巨匠コッポラの愚直なまでの怒りと嘆きが、画面から強く伝わってくる。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆CGの効果抜群の動く建造物など、コッポラを仰ぐアーティストたちが全力を傾けて生みだした映像美術が素晴らしい。主人公の秘密の能力から、時の進み具合が世間と異なる星新一の悲劇の短編を連想。だが話は書物からの引用が得意な知識人向けで退屈だった。喜劇か悲劇か結末に星一つおまけ。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★☆☆正直スベってる大作だが、フルスイングしてあさっての方向に球が飛んでいく豪快さもコッポラの味のひとつだ。時代錯誤な手法連発でも老害と呼ばないであげて欲しい。風刺的に都市像を描くシネオペラといった趣で『フェリーニのローマ』や同監督の『サテリコン』と並べて鑑賞したらハマるかも。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★☆☆現代のアメリカとローマ共和国の崩壊を縫合させる偉業。愛国や映画や芸術の終焉へ警鐘を鳴らし吠え続けるライオン。例えば、コッポラのワインを愛飲していた私は数十年熟成されたピノノワールじゃないが、幻視的、映画史的、何らかの期待を抱く。その味わいは時代遅れ感を感じるも壮大で崇高。

  • 今月のゲスト
    マライ・メントライン(著述家)

    ★★☆☆☆「アメリカの行きつく果て」を共和制末期ローマとシンクロさせ、無限に美しい一枚絵的ビジュアルと実験劇っぽいプロットむき出し描写の連鎖で展開する物語。構想40年にして新自由主義の構造悪を討つコンセプトは悪くないが、展開がおそろしく退屈・冗長で演者の輝きを殺しており、大不評にも納得。

    Marei Mentlein/1983年、ドイツ生まれ。テレビプロデューサー、コメンテーター。そのほか、自称「職業はドイツ人」として幅広く活動。

  • もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
  • 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
  • 料金の価値は、あり。★★★☆☆
  • 暇だったら……。★★☆☆☆
  • 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
カエサルの人物像は、古代ローマの著名な作家で政治家のキケロに対してクーデターを図った貴族で軍人のルキウス・セルギウス・カティリナより。本作では、時を止める力も持つ。
©2024 CAESAR FILM LLC ALL RIGHTS RESERVED 配給:ハーク、松竹
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『メガロポリス』
製作・監督・脚本:フランシス・フォード・コッポラ
2024年/アメリカ/原題:Megalopolis/138分
IMAX®ほか全国劇場にて公開
https://hark3.com/megalopolis/