〈あらすじ〉

 1976年のアルゼンチン。ブエノスアイレスにある名門寄宿学校の英語教師として赴任してきたイギリス人のトム(スティーヴ・クーガン)は、なかなか環境に馴染めず、仕事への意欲も持てずにいた。そんな中、軍事クーデターが勃発、学校は一時的に休校となる。そこで気分転換として訪れたウルグアイの浜辺で、トムは重油まみれになって死にかけているペンギンと出会う。

 行きがかり上、保護しただけなのに、なぜかすっかり懐かれてしまったトムは、仕方なく、そのペンギンを自身の宿舎まで連れて帰った。すると、その愛らしい姿にメイドたちは大歓迎。ペンギンは、「フアン・サルバドール」と名付けられ、学校の生徒たちの人気者に。トムとも奇妙な絆が生まれていく。しかし、国の政治状況は悪化する一方で、次第にトムの周囲にも危険が及ぶようになり――。

〈見どころ〉

 最初は常に不機嫌で温かみのない人物だったトムが、次第に観客を魅了し、自分の人生を取り戻していく様を、名優スティーヴ・クーガンが好演。

軍事政権下のアルゼンチンを舞台に1羽のペンギンが起こした奇跡!

瀕死のペンギンを救った英語教師トム。世界22カ国でベストセラーとなっている本人による回顧録を映画化。監督は、大ヒットコメディ『フル・モンティ』(1997)のピーター・カッタネオが務めた。

©2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ロングライド
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆話の作り込み方や観客を誘導する手口はきわどいが、一概にお涙頂戴とは言い切れない。ワイド画面の隅に短脚のペンギンが立つと、スティーヴ・クーガンのデッドパン演技が俄然、引き立てられる。凡庸だが醜悪ではない映画。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★★軍事政権下で教鞭をとる英国人教師の飄々とした姿が魅力的。本物のペンギンの眼差しと人間との可笑しみも。恵まれた親元に生まれようが命からがら逃げおおせようが、命の尊厳を失わずに生き延びよという教えが心に沁みた。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★☆☆ペンギンには心和むが、それを良心や哀感を立ち上げる装置として使う手つきはややラフに感じる。内容はキナ臭い現在の世界情勢や政治状況にも刺さるもの。反骨の精神が宿る社会派に仕上げた。スティーヴ・クーガン好演。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆飛べない鳥ペンギンと軍事クーデターと英国人教師。一見奇妙で不条理で予定調和なのかもしれない。でも観終わって号泣させられた私は、もうあの“フアン・サルバドール”を主人公同様必要とはしない。多幸感でいっぱいだ。

  • 今月のゲスト
    岡本真帆(歌人)

    ★★★★☆

    ペンギンがそこにいるだけで心がゆるみ、本音が溢れてしまう。みんながついフアンに悩みを話してしまう様子に、温かい気持ちになった。分かり合えなそうだった他者と徐々に通じあっていく光景に、何度も心を掴まれた。

     

    おかもとまほ/1989年生まれ。未来短歌会「陸から海へ」出身。現在、会社員として働くかたわら、東京と高知の二拠点生活を送りながら、歌人、作家として活躍中。歌集に『水上バス浅草行き』『あかるい花束』、エッセイ集に『落雷と祝福』がある。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
フアン・サルバドール役は、主に2羽のマゼランペンギンが担当(一部、本物のペンギンには負担になるシーンは人形やロボットで代用)。ペンギン優先の撮影現場は、とても和やかな雰囲気だったとか。
©2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ロングライド
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『ペンギン・レッスン』
監督:ピーター・カッタネオ 脚本:ジェフ・ポープ
原作:トム・ミシェル「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」
2024年/スペイン、英/原題:THE PENGUIN LESSONS/112分
12月5日(金)~
新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
https://longride.jp/lineup/penguin/