〈あらすじ〉
1964年、長崎。任侠一門の新年会で跡取り息子の喜久雄(黒川想矢/のちに吉沢亮)は、宴会座興として舞踊劇を披露。客に呼ばれていた上方歌舞伎の当主・花井半二郎(渡辺謙)は、その美しい顔と才能に驚く。
直後、父親(永瀬正敏)を抗争で殺され、身寄りのなくなった喜久雄は、半二郎に引き取られ、歌舞伎界に入門することに。そこには、半二郎の息子で同い年の俊介(越山敬達/のちに横浜流星)がいた。
ライバルとして切磋琢磨する2人。やがて、「東一郎」「半弥」という芸名をいただき、女形コンビとして人気者になっていく。
そんな中、半二郎が事故に遭う。公演が迫る『曽根崎心中』の代役として選ばれたのは喜久雄。ショックを受けた俊介は、喜久雄の幼馴染で恋人の春江(高畑充希)と連れ立って姿を消してしまう――。
〈見どころ〉
歌舞伎指導を担当したのは中村鴈治郎。みっちり稽古をつけて撮影に臨んだという。劇中に登場する演目はほかに、『関の扉』『連獅子』『二人藤娘』『二人道成寺』『鷺娘』。
2025年を代表する大ヒット映画
歌舞伎界の光と闇を描く一代記
2025年6月6日の公開以来、日本の実写映画としては22年ぶりに興行収入100億円を突破。さらに11月末までに173億7739万4500円に達し、歴代実写邦画第1位を記録する社会現象に。第50回報知映画賞では作品賞など四冠受賞。さらに米国アカデミー賞のショートリスト入りが決定、海外での受賞も期待されている。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★☆☆子役が眼を惹く序盤は気合十分だし、登場人物の情念の葛藤も手に取るように伝わる。ただ、後半はやや説話的に流れ、「どきりとするショット」にあまり遭遇できない。溝口健二の『残菊物語』の香気を望むのはないものねだりか。
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斎藤綾子(作家)
★★★☆☆女形の老いた人間国宝を演じる田中泯の、男色を匂わす演技にはドキリとした。若い女形2人の濃厚な関係は、歌舞伎を支える光景を丹念に描きすぎて冗長に。歌舞伎も物語も深く描くなら、シリーズ配信がよかったのでは。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆実に優秀な“新古典派”だ。特に感嘆したのはバランスの良さ。日本社会の周縁への目線など、李相日監督が描き続けるものの延長にある作家映画であり、同時に堂々の大衆映画。あとは国際的なステージにどこまで食い込めるか。
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洞口依子(女優)
★★★☆☆田中泯の重力。肉体、精神を超え異界へ誘うあの手、表情、絢爛、侘び寂び、土壌的存在の凄み。若手も奮闘。欠点は時間軸が飛び人が生きた時間の重厚感が希薄。D・シュミット監督の玉三郎の鷺娘と大野一雄の舞踏の説得力を思った。
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今月のゲスト
岡本真帆(歌人)★★★★★光が強ければ強いほど、影は濃くなる。正反対の生を歩む喜久雄と俊介。彼らにとって、互いは自身とは異なる才能の光であり、魂を焦がす鏡でもある。2人の芸がぶつかり火花が散る一瞬一瞬にただ見惚れ、息をのんだ。
おかもとまほ/1989年生まれ、高知県出身。東京と高知の二拠点生活を送りながら、歌人、作家として活躍中。著書に、歌集『水上バス浅草行き』『あかるい花束』、エッセイ集『落雷と祝福』などがある
- 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
- おすすめできます♪★★★★☆
- 見て損はない。★★★☆☆
- 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
- うーん……。★☆☆☆☆
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会 配給:東宝
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『国宝』
監督:李相日 脚本:奥寺佐渡子
原作:吉田修一『国宝』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
2025年/日本/英題:Kokuho/175分
ロングラン公開中
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
https://kokuhou-movie.com/




