台湾原住民が抱える現代社会と伝統文化の相克とは？　あの『セデック・バレ』の出演者が再共演も話題【日本初上映『猟師兄弟』】

　リム・カーワイ監督をキュレータ―に迎えた「台湾文化センター 台湾映画上映会」の第3回目が6月14日、早稲田大学小野記念講堂（東京・新宿区）で開かれた。日本でも公開された映画『セデック・バレ』などでも知られる台湾の原住民の現在を描いた作品とあって、多くの台湾映画ファンが詰めかけた。

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　この日は2024年製作の『猟師兄弟』が日本で初上映された。上映後のトークイベントには、本作のスー・ホンエン（蘇弘恩）監督、石坂健治・東京国際映画祭シニア・プログラマー、張文菁・愛知県立大学外国語学部中国学科准教授、千野拓政（早稲田大学名誉教授）が登壇した。

台湾原住民のいまを描く

　上映後のイベントでは、まず千野名誉教授が台湾の民族、原住民について解説。それによると、一般に日本人が台湾人と思っているのは、中国にルーツのある「漢族」であり、台湾に渡って来た時期によって「本省人」と「外省人」に分けられる。前者は16世紀から17世紀の明朝末期から清朝初期以降、第二次大戦前にかけて中国から渡って来た人たちを指す。後者は第二次大戦後、国共内戦に敗れた国民党とともに台湾に渡って来た人たちだ。そしてこれら漢族とは民族的に異なり、太平洋の南の島から渡って来たとされる「原住民」がいて、16の部族が認められている。伝統的に山間部、島嶼部に住んでいて、『猟師兄弟』はこのうち台湾東部に暮らすタロコ族の兄弟を主人公として描いている。

　登壇した本作のスー・ホンエン監督（以下、スー監督）は、多くの観客が『猟師兄弟』を観るために足を運んだことに感謝してこう語った。

「これは私にとって初めての長編劇映画です。この映画の多くのシーンや俳優は、私の故郷である花蓮（台湾東部）に由来しています。私はタロコ族と閩南人（本省人）のハーフで、今回の映画では故郷の場所でたくさん撮影をしました」

　台湾出身の張文菁准教授は、「現代の原住民の生活を描いていますが、この作品は台湾の鬱蒼とした山々、緑、時折吹き抜ける風をよくとらえていて、早く台湾に行きたいという気持ちになりました」と語った。