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大学教授の立場から伝えたい、「結果」が出ない時の「転身」のススメ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/17
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 既に忘れている人もいるかも知れないし、信じてくれない人もいるかも知れないが、自分は実際に大学教員をしている。とはいえ、やっている仕事の内容は、他の大学教員とは少し違っている。普通の大学教員の仕事の中心が学部生の教育なのに対して、自分が所属する部局(大学では学部や大学院をこう呼ぶ)は学部が存在しない、業界用語でいう「独立大学院」という組織だからである。主な仕事は大学院生の研究指導、学部には時々お手伝い的に教えに行く程度である。

 こう書くと業界関係者の多くはこう言うだろう。だからお前は講義負担が少なくて時間があるので、京セラドームやほっともっとフィールドに行ってオリックスの試合を頻繁に応援できるのだ、と。でも残念ながら実際には話はそれほど単純ではない。

 例えば昨年の通算出張日数は94日。1年の4分の1は神戸ではなく、東京やソウル等にいた事になる。とはいえ、仕事上最も時間がかかるのは、大学院生の研究指導である。独立大学院の教員だから沢山の大学院生を指導している。そしてその指導の持つ意味は大きい。何故なら自らの専門領域から離れた分野でも就職活動をする人が多い学部生と異なり、大学院生の将来の就職先は彼らの研究領域と密接なものになる事が多いからだ。だからこそまかり間違えば我々の指導次第で、彼らの人生は大きく変ってしまう。だから今夜もフレッシュオールスターも見ずに院生指導の為に残業中だ。

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大学院生をプロ野球選手と重ねてみる

 指導する大学院生達は既に学部を終えているので22歳以上。一旦社会人になってから大学院に入り直す人もいるから、博士後期課程の学生になれば30歳近い人も珍しくない。そう、自分が教えている大学院生はちょうどプロ野球選手たちと同じ年代の人たちなのだ。

 そして大学院生もプロ野球選手も「その世界」に入ってから成功する人たちばかりではない。大学院入試を抜群の成績でクリアして、学部の指導教員も太鼓判を押す「ドラフト1位」の大学院生が伸びるとは限らない。当初は「こいつは大丈夫なのか」と誰もが心配した大学院生がみるみるうちに研究業績を伸ばして「レギュラー」を獲得する事もある。一旦「その世界」に入ってしまえば、「結果」が全て。「アマチュア時代の評判」など何の意味もなさないからである。

 勿論、指導教員としては「結果」が出ない大学院生を見るのは辛い。「結果」を出せないまま、後輩達が自分を追い越していけば、焦りは増すし、悩みも深くなる。そしてその様な中、やがては精神的にも袋小路へと追い込まれていく大学院生も少なくない。

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