髪の毛を掴み、ナイフを突きつける壮絶演技が話題に
2024年に『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)で福原が演じた本宮密子は、天使のような笑顔の裏で姉を苦しめてきた人間への復讐心を燃やすダークヒロインだった。
印象的だったのは、幼い頃から自分や姉に暴力を振るってきた父親を殺そうとするシーン。父親の髪の毛を鷲掴みにし、ナイフを突きつける壮絶な演技で、それまでのイメージを一新させた。
この密子を演じた経験が『べらぼう』でも大いに生かされている。誰袖もまた目的のためなら手段を選ばないキャラクターだ。蔦重に身請けしてもらうため、死に際の大文字屋(伊藤淳史)に「蔦屋に500両で身請けを許す」という遺言書を無理やり書かせる誰袖。
それはまだかわいいほうで、松前藩とロシアの密貿易の証拠を掴むため、花雲助と名乗って吉原に潜入した田沼意知(宮沢氷魚)に一目惚れすると、身請けを条件に協力を名乗り出る。
さらには「証拠がないなら作ればいい」の精神で、松前藩の江戸家老・松前廣年(ひょうろく)に密貿易を持ちかける策士っぷり。女の武器を最大限に利用し、男を手のひらで転がす小悪魔花魁役でまたもや新境地を開いている。
廣年に抱きつき「主さん、ぜひいつの日か、身請けを」と囁きながら、障子の向こうで聞き耳を立てている意知に向ける表情が特に色っぽく、思わずクラッとしてしまった。一視聴者としても福原が演じる誰袖に翻弄されている。
しかし、史実通りならば、誰袖は勘定組頭の土山宗次郎(栁俊太郎)に身請けされた後、瀬川と同じような悲劇に見舞われる。恋に恋する天真爛漫な少女から、男の人生を狂わす悪女となった誰袖が次にどのような変貌を遂げるのか。26歳にして今年で芸歴20年を数える福原の引き出しの多さが発揮されそうだ。
なお、7月スタートのフジテレビ系月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』では主演を務め、児童相談所への出向を命じられた所轄の刑事・夏井翼を演じる福原。公式サイトでは明るく朗らかな性格で正義感が人一倍強いキャラクターと説明されており、こちらは本人のパブリックイメージと近く、誰袖役とのギャップも楽しめるのではないだろうか。

