ローマ教皇を新たに任命するための選挙「コンクラーヴェ」。今年5月、初参加となった菊地功枢機卿の不安を解消したのは映画「教皇選挙」だったという。そして、アジア出身の枢機卿たちがメッセージングアプリのグループで行っていたやりとりとは?
映画「教皇選挙」を観ていた
実は、初めてコンクラーヴェに参加するにあたり、多少の不安を解消してくれたのが、今年のアカデミー賞でも注目を集めた映画「教皇選挙」でした。3月、会議のためにローマに向かう飛行機で観たのですが、これがなかなかよくできていた。読者の方の中にも、この映画をきっかけにコンクラーヴェに興味を持った方は多いのではないでしょうか。
もちろん、あれはあくまでもフィクションで、実際とは異なる点も多々ありますし、映画のように枢機卿同士が貶め合うようなことはまったくありません(笑)。
それでも、コンクラーヴェの会場となるシスティーナ礼拝堂の様子や、儀式の手順、雰囲気などは、よく再現されていたと思います。
映画の描写と同じく、コンクラーヴェの期間中、枢機卿団はサンタ・マルタ館に泊まります。ここは普段、バチカンで働く聖職者の宿舎として使われる建物で、フランシスコ前教皇も本来の住居であるバチカン宮殿ではなく、ここの一室に暮らしていました。選挙直前に私たちがサンタ・マルタ館に向かうと、特設の入口には空港の保安検査のような機械が並んでいて、携帯電話やパソコン、スマートウォッチ、充電器に至るまで、すべての電子機器が没収されました。これは外部への情報の漏洩を防ぐための措置で、コンクラーヴェの期間中、バチカンでは携帯電話の通信も遮断されます。
映画では、サンタ・マルタ館の食堂でシスターが給仕をし、枢機卿たちが長机で赤い法衣を着たまま食事をするシーンが頻繁に出てきますが、実際は丸テーブルで、配膳などは外注の民間企業のスタッフが行っていました。ちなみに料理の味は……まあまあですね(笑)。
