姿を見つけるのが難しい候補者

 まるで「幻の生物」を追っている探検隊の気分だった。東京都議選である。なぜ選挙戦でそんな気分になるのかと言えば、姿を見つけるのが難しい候補者がいたからだ。

  え、候補者って自分の存在を見てもらってナンボでは? と思ったあなた、その感覚は正しい。「SNSと選挙」が大きなテーマになる今、その日の演説場所を有権者に知らせるくらいの情報発信は基本だ。しかし発信をあえて避けているような候補者をよくみかけたのだ。

 人手が少なくて更新できない候補者もいただろうが、そうした物理的な理由とは別に思える候補者もいた。今回の都議選で言うなら「裏金」議員である。

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 たとえば告示翌日、東京新聞の1面トップは『裏金自民 やまない逆風』(6月14日)。世田谷区で無所属で出馬した三宅茂樹候補の選挙戦初日を報じていた。

世田谷区で無所属で出馬した三宅茂樹候補

 三宅氏は政治資金収支報告書に251万円の不記載があった。しかし当の三宅氏は演説で、最後まで自身の裏金問題に触れなかったという。聴衆の「説明しないのはダメ。どういう事情があろうと」という感想が印象的だった。

 おさらいすると裏金問題は都議会自民党にもあった。自民党都議たちでつくる政治団体「都議会自民党」が、2019年と2022年に政治資金パーティーを開いた。都議らがパーティー券の収入の一部を「中抜き」し、裏金としていたというものだ。この件を昨年末にスクープし、調査報道を続けてきたのが「地元」の東京新聞だ。

※東京地検特捜部は1月、計約3500万円を記載しなかった政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で会計担当職員を略式起訴。職員は有罪が確定した。

 裏金を何に使ったか。ほとんどの都議が「使っていない」と弁明していたが、東京新聞の取材に「ウソだった」「使っていた」と証言した人もいた。世の中から見えないお金が、自分の立場を守るため、もしくは選挙に使われていたとすれば深刻な話である。そして今回、裏金問題に関与していた都議らのうち、現職16人と元職1人が都議選に立候補した。会派の幹事長経験者6人は自民党の公認が見送られ、無所属での立候補となった。

 先述した世田谷区の三宅候補は幹事長経験者6人のうちの1人なのである。