「マスゴミがまた盗撮してるよ」

 塩田 犯罪や事件に関わるスキャンダルであれば、もちろん堂々と報じていい。問題は、芸能人の私生活ですよね。昔は少しすれば忘れられたし、時間がたてば笑い話にも、ネタにもなったかもしれない。でも今は、一枚の写真、一つの記事で徹底的に追いつめられかねない。もちろん追いつめるSNSに問題があるんですが、そういう状況下で、芸能人を準公人と見なしていいのか。私生活のスキャンダルを公的情報として出す意味があるのか。おそらくこれ、50年後は許されないんじゃないかという気もするんです。

テーマごとに分けられた取材メモの数々 ©文藝春秋

 竹田 考えないといけない時期に来ているのは、おっしゃるとおりです。私が編集長になる前からなので、この7、8年だと思うんですけど、我々の感覚も変わってはきてるんですよ。

 たとえば写真週刊誌は、昔、追っかけ日記みたいな記事をやっていて、芸能人が行きそうな場所を張り込んで、「〇〇さんがネギと豆腐を買ってました」みたいなことを書いていた。ああいう記事には公共性も公益性もないよねとなって、一切なくなりました。うちもやってませんし、何より読者の支持が得られなくなったのが大きいです。「マスゴミがまた盗撮してるよ」って、ハイエナのように言われるようになりましたから。

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 じゃあ、不倫とか恋愛、これをいつまでやるのか。記事の波及力がものすごく大きいために「文春、不倫ばっかりやってるじゃん」と言われがちです。確かにやっている。やってますけれども、記事の本数、そこにかける人員やコストを徐々に減らしてはいます。「減らしてはいます」というのが、今、申し上げられる正直なところなんですね。「だったらやめろよ」というご意見があるのは承知しています。文春ほどの取材力があるんだったら政治家や官僚のスキャンダルだけやったらいいのにとよく言われる。わかるんですけど、それは非常に難しいところで……。