黒板の文字をノートに書き写す作業が苦手で、授業についていくことができず…

 メールは、ユニバーサルデザインの文字が読みやすい。さらに、1行ずつ行を空けている文章が最も読みやすい。年齢を重ね老眼のためか、年々、文字は読みづらくなっている。

 そのため、近頃は何か学ぼうと思うときは、本よりもYouTubeなどを利用している。コンパクトな文字情報と音声のセットのほうが理解しやすい。

 以前は過敏だった感覚が、年齢とともに緩和されている面もあるという。それは光のまぶしさや聴覚などだ。割り箸が唇に当たるときに感じる痛みも、少しずつ鈍くなってきている。

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 筆圧も弱く、子どものころはノートに文字を書くこともうまくできなかった。

 授業で黒板の文字をノートに書き写す作業が苦手で、黒板を見て記憶できる単語は、せいぜい1つか2つ。黒板を見てノートに1つ2つの単語を書き写し、また黒板を見て1つ2つの単語を書き写すという作業を繰り返さねばならなかった。このため授業についていくことができない。

 集中力もなかった。授業で、先生の話の中に気になる単語が出てくると、そこから次々と言葉を連想して授業とは関係のないイメージが膨らんでゆき、学習が身につかない。「真面目に聞かなくちゃ」と指を思い切りかんだり、シャープペンシルで指を刺したりして、痛みで意識を集中させようとするが、うまくいかなかった。

写真はイメージ ©graphica/イメージマート

両親から「努力が足りない」「勉強をサボっている」と厳しく指摘され…

 そのためテストでもいい点を取れなかった。

 テストの点数がふるわなかったり、宿題を期限までに完成できなかったりすると、両親から厳しく叱られた。

「努力が足りない」と叱咤され、「勉強をサボっている」と指摘される。

 自分では精いっぱい努力をしているのに。ときには体罰も加わった。

 父親からそろばんを教わっていたときのこと。

「1円なり、2円なり……」。まずは父親が、そろばんを手にして実演をしてみせる。だが、くすのきさんは、指先をうまく動かすことができず、玉をはじけない。何度も失敗すると、突然、父親にそろばんで頭を叩かれた。

 そろばんは壊れ、玉が飛び散り、くすのきさんは頭から出血した。中学では理科や保健はテストで90点以上を何度も取ったが、英語と数学は30~40点台と、出来不出来の差が激しかった。