約20年前、医師から長男が発達障害だと告げられた、朝日新聞記者の太田康夫さん。「発達障害のある子どもを持つ親としてさまざまな知識を得たい、情報を求めている方々に向けて、 役に立つ記事を発信したい」という想いで発達障害当事者や家族、支援する人の取材を続けている。

 ここでは、そんな太田さんが今年5月に上梓したノンフィクション『記者が発達障害児の父となったら』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。発達障害がある2人の子どもの母親で、自分自身にも発達障害があると自覚しているくすのきゆりさんのエピソードを紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージ ©graphica/イメージマート

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注意力が散漫で、文字を読むのが苦手な子どもだった

 くすのきさんは、幼いころから注意力が散漫で、忘れ物が多い子どもだった。

 忘れ物をしないように、毎日すべての教科書とノートをランドセルに入れて登校していた。読み書きが苦手で、読書感想文や暗算問題には特に苦労をした。

 本を読んでいるとき、次の行へと順を追って読むことが困難なのだという。

 1行目の次に3行目や4行目などにポンと視線が飛んでしまう。そのため2行目まで戻って読み返さなければならない。そうしたことを繰り返すため、なかなか先へと進めない。

 当時は、他のクラスメートもみんな同じ状態なのだと思っていて、「私はまだ努力が足りないのだ」と考えていた。

 今でも文字を読むのが苦手だ。

 文字の大きさや書体、自身の体調によっては、文字が大きく見えたり小さく見えたりすることがある。

 自身のブログは、1行ずつ行間を空けている。行間が詰まっていると、自分自身、読めないからだという。