お金持ちな職業の代表格である「医師」。しかし、一口に医師と言っても勤務医か、開業医かで収入は大きく異なるという。

 そもそも医師たちの収入は、どんな要素で成り立っているのか。その中には、本当は必要ない、無駄なものまであるようで…。現役医師である里見清一氏の新著『患者と目を合わせない医者たち』(新潮社)より一部抜粋し、お届けする。(全2回の2回目/最初から読む

本来不要な医療費がかさんでいる、悲しい理由とは? ©takasu/イメージマート

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 がんセンター時代に、私の下にいたレジデントM君が、任期途中で辞めることになった。国許で開業している親父さんが倒れて、急遽跡を継がねばならなくなったらしい。進路変更を余儀なくされたMは残念そうだった。ところが数年後、Mは開業医として稼ぎまくり、飛行機はファーストクラスにしか乗らないと豪語する身分になった。かつての仲間は、レジデントを卒業してそれなりの病院に勤務しているが、その給料はMの足元にも及ばない。

 かく言う私も、海外に行くのはほぼエコノミーである。たまにビジネスクラスに乗るのは、製薬企業がスポンサーとなった研究の発表に行く時だけだった。私は今や「高額治療の適正化」を掲げて、高額薬の使用を減らそうという研究活動をしているから、製薬企業から支援どころか目の敵にされるだけである。多分もう一生、エコノミー以外に乗ることはないだろう。

 M君の例は極端かもしれないが、開業医と勤務医の収入に大きな格差があるのは周知の事実だろう。