「エクスキューズミー、チョット、イイデスカ?」
りんかい線の出入口のすぐ隣には「天王洲公園」と名乗るグラウンドが広がる。サッカー場に野球場。草野球などに使われるグラウンドなのだろうか。
……などと思っていたら、地図を片手に歩いている外国人に道を尋ねられた。日本語は思うに任せないようで、かといってこちらも英語はトンとできない。身振り手振りの応酬でなんとか説明して差し上げたのだが、よく見渡してみると外国人の姿も多い。羽田空港からモノレールで20分ほどの天王洲、海外にも近い町なのだ。
……と、こうして駅のすぐ近くをうろつく限りでは、天王洲アイルは実に真新しい埋立地らしい清新なるオフィス街、といった印象を抱く。
ところが、これだけで納得しては早計に過ぎる。天王洲交差点から東に歩き、京浜運河を渡った先にはオフィス街とはまた違った景色が待っているのだ。
運河を渡った先には何がある?
京浜運河の向こう側、何やら高架の鉄道が見えると思ったら、新幹線が颯爽と通り過ぎてゆく。大井車両基地に向かう引き込み線だ。
その下を潜った先には大きなコンテナがずらりと並んで積み上げられ、それを背中に乗せたトラックが行ったり来たり。品川コンテナ埠頭、つまり東京港の一大拠点へと続いてゆく。物流の要としての、武骨な町である。
他には品川火力発電所も見える。発電所というともっとモクモクと煙が上がっているようなものだと思っていたが、イマドキはそんなことはないようだ。すぐ近くにはオフィスビルやマンションがあるというのに、その真ん中にごくごく普通に100万ワット超の発電所が建っている。
天王洲交差点に戻り、今度はオフィスビルの合間を縫って西側へ。するとこちらは何やらめかしこんだ女性グループやカップルの姿が目立つ。平日の真っ昼間からどういうことか。
そう思って人の流れに乗ってついて行くと、どうやらこのあたりには倉庫を活用したアートスポットが点在しているらしい。特に多くの人が向かっていたのが「ジブリの立体造型物展」。天王洲アイルは、「アートの町」という側面も持っているのだ。令和のウォーターフロントの最先端、といったところだろうか。
ここで改めて、天王洲アイルがどこにあるのかを、視野を広げて捉えてみることにしよう。




