知られざる「舞妓さん」の日常

松原 当時のお休みは月2日でした。今は週に1日はお休みのようです。私の場合は、普段は日本髪を結っているから入れない本屋や映画館に行ったり、一人でご飯を食べに行っていましたね。お客様やお茶屋さんからいただくご祝儀は自分のものになるので、自由に買い物ができるくらいのお金も持っていました。

一度結ったらしばらく結いっぱなしの日本髪をほどける解放感があるのが休日だったという 『舞妓をやめたそのあとで』より

 それ以外にも、お稽古から帰ってきて仕事の支度をする前までの2~3時間と、仕事から帰ってきて寝るまでの間は自由時間です。

――その時は、テレビを見てのんびりしたりするのでしょうか。

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松原 テレビは普段観られないのですが、一度深夜に放送されていたホラー映画をどうしても観たくて、後輩舞妓ちゃんたちと結託して女将さんが寝静まったのを確認してから観たことがあります。声を出せない状況で見るホラーはまた違った緊張感があって楽しかったです(笑)。

――青春ですね。置屋やお茶屋の女将さんのことを「お母さん」と呼ぶと漫画に描かれていましたが、本当のお母さんのような関係だったのでしょうか。

松原 お母さんとの距離感は一言では言い表せません。基本的には花街は上下関係がとても厳しいので、お母さんはめちゃくちゃ怖い上官のような存在でした。

置屋の女将さん「お母さん」との一言では言い表せない関係性も、漫画から伝わってくる 『舞妓をやめたそのあとで』より

 ですが、時には嫌なお客様から守ってくれたり、芸を上達させようと別稽古をしてくれたり、置屋の舞妓さんみんなを連れてご飯に連れていってくれたりと、先輩のような、母親のような存在だと感じることもありました。

――舞妓さん同士の横のつながりも結構あるんですね。同じ置屋以外の舞妓さんとも交流があるものなのでしょうか。

松原 もちろんあります。京都には5つの花街があるのですが、違う街の舞妓さんと仕事で一緒になった時は「いつお店出し(デビュー)しはりました…?」とお尋ねして、お店出しが前後半年の中であれば「同期やー!」と喜んでいました。同じ街の舞妓さんたちともお稽古場で会えば他愛もない話をたくさんしましたね。

――ひとつお伺いしたいのですが、お茶屋さんは「一見さんお断り」であることが多く、舞妓さんに興味を持っても、なかなか会えずにいる人が多いのではないかと思います。そういう人が舞妓さんに会うためにはどうしたらいいでしょうか。

松原 最近はお茶屋さんと京都の料理屋さんが提携して、気軽に舞妓さんを呼べるプランがあったりします。

 お茶屋さんは言うなれば「会員制」なので敷居が高いかもしれませんが、そういった場で舞妓さんとお話ししても楽しいと思います。現に私も現役時代、観光でいらっしゃったお客様のお席が大好きでした!

次の記事に続く 「接客業があまり得意ではありませんでしたが…」15歳から花街で働いた元「舞妓さん」(26)が語る、“イヤなお客様”“良いお客様”との付き合い方