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日本ハム・渡邉諒は、それまでの自分をひょいと超えてみせた

文春野球コラム ペナントレース2018

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選手の跳躍を見るという特別な瞬間

 2ホームランの活躍を報じた記事で、うまい見出しだなと思ったのは「日本ハム 外れ外れ外れ1位渡辺が当たり当たり2発」(日刊スポーツ、7月21日付)だ。渡邉諒は2013年ドラフトの外れ外れ外れ1位という、響きだけ聞くと何とも微妙な存在なのだ。松井裕樹(桐光学園→楽天)が外れ、柿田裕太(日本生命→DeNA)が外れ、岩貞祐太(横浜商大→阪神)が外れ、方針を変えて高校生野手を1位指名したのだ。

「東海大甲府の渡邉」は甲子園でも活躍した内野手だった。100メートル11秒4の足、高校通算39本塁打の打力、遠投105メートルの肩。松井裕樹、森友哉らとともに18Uワールドカップ代表にも選出されている。僕は当時、色んな人から「おめでとう、いい選手を獲ったね」と声をかけられた。外れ外れ外れ1位でも、ちゃんと野球を見ている人には実力がわかっていた。

 ところがプロ入り後、順調にはいかなかったのだ。いきなり1年目から右足裏の骨折で長期離脱、その後も色んなケガが相次いだ。2軍暮らしが長引いて、焦りの感情も芽生えた。

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「ケガが続いてチームにも迷惑かけましたし、若い人たちが活躍するのを(鎌ケ谷の)テレビの前で見てて、自分自身、札幌でしっかり活躍したいって思いで過ごして来たんで、ホントよかったです」(ヒーローインタビューより)

 長く野球を見ていていちばん嬉しいのは、選手がきっかけをつかんで跳躍する瞬間を見ることだ。ずっと同じ課題を抱えていた選手、壁を越えられなかった選手、もがいていた選手がひょいとそれまでの自分を飛び越えてみせる。感動だ。特別な瞬間だ。それはたった一日、魔法のように出現し消えていくこともあるし、その一日を境にグンと成長を遂げることもある。この日、ファイターズファンは渡邉諒の跳躍を確かに見た。最高の最高の最高だ。

 去年どうしても歯が立たなかった「ソフバンの旦那」との3連戦は、渡邉諒、杉浦稔大、井口和朋とまさに日替わりヒーローの活躍でスイープを達成した。前半戦くすぶっていた松本剛が仕事をしたのも嬉しい。どんどん出てきてほしい。前半戦と違う戦力が出てきて、チームがパッと明るくなるのだ。明朗に野球をやろう。明日何が起きるか、わくわくしながら待とう。

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