亀梨に教える選手たちは生き生きしていた

 このシリーズには数々の一流選手が登場したが、亀梨に教える選手たちの表情が、他のテレビ番組では見せない生き生きとしたものであったことが私には印象的だった。彼らは亀梨のチャレンジを応援しつつ、自分たちの技術にはこういうロジックがあって、こういうふうに成り立っているということを解説していたのだ。

 既存のメディアは選手たちに「人間ドラマ」ばかりを求めてきた。スポーツ記者はプロ野球を娯楽として「消費」するための物語を読者や視聴者に提供することが仕事である。そこには「運動を奨励しよう」という意図は基本的にない。だからこそ人間ドラマばかりを書くし、技術論はほぼ「禁じ手」となっている。

 一方、選手たちは自らの技術に誇りを持ち、それを常に磨いてきている。亀梨というテレビスターは、その点に興味を持ち、熱心に取材していたのだ。

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「技術論にはニーズがない」というメディア

 私の知っている範囲では、スポーツやメディアの関係者はしばしば「技術論にはニーズがないからやっても意味がない」と言う。たとえば野球のメディアで代表的な雑誌に『週刊ベースボール』があるが、120ページほどあるうちプロ野球のチーム戦略、裏話、ドラフト情報などが大半を占め、技術解説はわずかしかない。

 一方、たとえば『ゴルフダイジェスト・オンライン』や『アルバトロス・ビュー』といったゴルフメディアはどちらかといえば技術論がメインになっており、野球がゴルフのような文化性を持つこともありえない話ではなかったはずだ。しかし、野球をめぐるメディアは「野球は子どものときにするもの、大人はみる野球を『消費物』としてのみ楽しむ」という見方を再生産し、運動の奨励は決してしないのである。

 ジャニーズアイドルは、マッチョ体型よりもほっそりとした少し筋肉質な細マッチョ体型を維持する必要がある。亀梨は俳優やコンサート活動もする忙しい生活のなかで、隙間時間を見つけて、マッチョになりすぎない範囲で野球のトレーニングを続けていく、つまり亀梨の「大人になっても野球に真剣に取り組む」姿には新鮮さがあった。