「クーニン」、「トクサン」との共通点

 こうした亀梨の姿勢は、2010年代半ば以降に注目されるようになった「野球YouTuber」たちに大きな影響を与えていったと考えられる。野球YouTuberは、「クーニン」や「トクサン」などが代表的だが、クーニンTVは現在約46万、トクサンTVは現在約83万のチャンネル登録者数を持っている。

©GFdays/イメージマート

 彼らは基本的に草野球をする人たちで、「野球のスポーツとしての楽しさを伝える」ということにフォーカスしている。これは今まで野球をめぐるメディアがほとんど手をつけてこなかったことだ。彼らに影響を受け、草野球シーンはいま活性化しつつある。

アスリートを神格化して「消費」しないために

 また野球YouTuberの登場で何が可視化されたかといえば、野球が生涯スポーツであるということだ。野球は別に高校で終わりでもなければ、大学で終わりでもないし、学生野球で燃え尽きる必要もない。社会人野球やプロ野球など「野球で仕事をする」ということに辿り着けなかったら意味がないのではなく、生涯にわたって続けていけるスポーツである。仕事や学業と両立しながら真剣に楽しく野球に取り組んでいる人たちがいる──これには「アマチュアリズムの体現」としての意義がある。こうしたことは、スポーツジャーナリズムがやるべきでありながら伝えてこなかったことだ。

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 もちろん、技術論を含めたスポーツとしての野球の面白さは、テキストではなくテレビやYouTubeなどの動画だからこそ伝えられるという部分もあるだろう。テキストによるスポーツ評論がやるべきことがあるとするならそれは、いたずらに「大人の男らしさ」にこだわり、アスリートを神格化して「消費」することではなく、野球ならば野球というスポーツの価値をより多くの人に向けて開いていくことではないだろうか。

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