「逆首位打者」でも、悲観することはない
問題の打撃についてもそう深刻にとらえる必要はない。
昨年、小林の打率は2割6厘。規定打席に到達した28人の中で最下位だった。ちなみに16年も規定打席に到達した中で最下位だったから堂々の2年連続「逆首位打者」である。でも、悲観することはない。通算出場試合数歴代1位の谷繁は通算2000安打を達成し、名球会入りも果たしているが、3年連続を含む5度の「逆首位打者」に輝いて(?)いる。若いころは打撃も良く、シーズン2桁本塁打を8回も記録している谷繁と一緒にするのはやや憚られるが、そんなに打てなくても名捕手になることは十分に可能なのである。
小林が今後阿部や城島のように打ち始めることは正直考えにくいが、谷繁のように成長していく可能性は十分にあるだろう。その谷繁は自身の著書『谷繁流キャッチャー思考』の中で、「捕手の機転で試合の流れを変えた例」として、2017年のWBCで6球連続ボールと苦しんでいた中日・岡田に小林が声を掛けに行ったケースを挙げている。谷繁からは「小林のリードは強弱がない」等と批評されることもあったが、自身と同じ守備型の捕手としてその能力とセンスは認めているのではないか。
小林がスタメンマスクを失ってしまった現状をどうとらえているかは分からない。だが、耐えていれば必ずチャンスが巡ってくるのが捕手というポジションでもある。長く阿部のバックアップを務めた実松は、出場機会に恵まれない時、バッテリーコーチから言われた「打者として阿部と勝負するのは難しくても、捕手としてなら勝負できるよ」という言葉を心の支えにしていたという。それこそ、打撃が苦手な小林は捕手というポジションから逃げることはできない。そして「打てない捕手」が捕手であり続けるためには、チームが勝つことしかない。谷繁は1997年に横浜で2位になって以来、所属チームが16年連続Aクラスという驚異的な記録を残している。
つまり、小林が生き残るには、いつか必ず来るチャンスをじっと待ち、チームを勝たせるしかない。そしてそれを成し遂げる力は十分に持っている選手であるはずだ。
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