買収から1週間近くで…衝撃的なメールの内容は

各位

 ツイッターを健全な道に導くため、この金曜日、我々は、世界全体で社員を削減するという困難を乗り越えなければなりません。ツイッターに価値ある貢献をしてくれた人もかなりの数が影響を受けることになりますが、残念ながら、これは、今後、会社が成功するためにどうしても必要なことなのです……

 買収から1週間近くで初めて、全社に流される公式文書がこれか。うわさは本当だよとツイープスに知らせるメールだとは。大量解雇が行われる。しかも、対面でもなければ就業時間中でもない。ソーシャルメディアの10億ドル企業ならこういうふうにするだろうと思うようなやり方でもない。そういうことらしい。

 分散型の働き方であること、また、影響を受ける社員には少しでも早くお知らせしたほうがいいであろうことを鑑み、この措置に関する通知はメールで行うこととしました。

 11月4日金曜日の朝9時(太平洋標準時)、「ツイッターにおける貴君の役割」という題名の個別メールが届きます……

 人事の人間が会いにくるわけでもない。経営陣から直接告げられるわけでもない。直属の上司から電話がくるわけでもない。ツイープスは勤続10年以上の古参が多く、みな、よちよち歩きのスタートアップから世界のタウンホールまでツイッターを育ててきたというのに、明日朝、目が覚めたら職を失っていたなんて憂き目にあわされるのか。しかも、失職と同時に、会社のアカウントにもメールにもスラックにもアクセスできなくなるらしい。

※画像はイメージ ©AFLO

 社員個々人の安全を守るため、また、ツイッターのシステムと顧客のデータを守るため、事務所は一時的に閉鎖します。バッジによる入室も一時的にできなくなります。いま、会社にいる人や会社に向かっている人がいたら、家にお帰りください。

 ジェシカは、このメールをしばらくにらんだあと、ワインボトルに手を伸ばした。指が震えている。クビになった経験はないのでよくわからないが、これがふつうだとは思えない。ふと気づいたのだが、人事から連絡がないのは、もう人事に人が残っていないからなのかもしれない。

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 実際のところ、混乱は人事にとどまるものではなかった。朝にはあまりに多くのツイープスが解雇され、会社のシステムがあっちもこっちも機能を停止する。IT担当者が自分のアカウントにアクセスできなくなり、Wi‒Fiが止まる事務所が続出。あちこちでチームが丸々消え、社員名簿もオフラインになってしまったので(さらに、社員名簿のパスワードを知っているITエンジニアも彼の仲間も全員が切られたらしく)、どのコアプロダクトに影響が出るのかもわからなければ、いなくなった人のあとを引き継げる人がいるのかもわからない。