仲間が、ひとり、またひとりと…
その夜、ジェシカは、この大混乱をスラックとツイッターでリアルタイムに見ていた。
運命は翌朝9時に連絡されると書かれていたにもかかわらず、そのメールが送られてきた直後に惨殺が始まった。スラックに、ひとつ、またひとつと、ブルーのハートや敬礼の絵文字が投稿されては、次の瞬間、そのアカウント自体が消える。死する魂の静かなる行進だ。何年も一緒に仕事をしてきた仲間が、ひとり、またひとりと、メールにアクセスできなくなったりノートパソコンを起動できなくなったりしていく。誰かが指を動かすたび、運命がひとつ、明らかになるのだ。
部屋の反対側にある窓のカーテンの隙間から朝の光が漏れ入ってくるころ、ジェシカはノートパソコンを閉じ、その冷たいアルミに頭をもたせかけた。空になったデミボトルが目の前にぼんやりと見える。彼女は、いまのところ、まだ、メールにもスラックにもアクセスできるし、マーケティングの仲間もほとんどが残っているようだ。ロビンも、大丈夫だからと安心させるメールをマーケティングのメンバーに送っているし、トラスト&セーフティ部門の責任者であるヨエル・ロスもまだ仕事をしていて、ヘイトをまき散らすトロールアカウントをできうるかぎりのスピードで撃退している。
うとうとしながら、ジェシカは、ブルーのハートに小さな敬礼の絵文字がいつ果てるともなく続く様子がいまだに見える気がしていた。ツイッター1・0、#lovewhereyouworkは息を引き取ってしまった。彼女が愛してきた会社、きらきら輝くツイープスの会社、彼女が知るそういう会社は、もうない。
この朝、7500人ほどいたツイッター社員の半分が消えた。そして、ジェシカもまもなく知ることになるのだが、これは始まりにすぎなかった。