「トクリュウ」をターゲットに

 ルフィを中心とする犯罪グループは、まったく新しい反社会的集団で、警察も相手にしたことがありませんでした。これまで警察の組織犯罪対策は暴力団が対象の中心で、都道府県警察の組織犯罪対策部署は暴力団係として機能していました。

 しかし、暴力団構成員の人数は2024年末時点で、前年比500人減の9900人。20年前、構成員は4万人以上もいましたが、20年連続で減少しています。これに伴って近年、犯罪グループの構成員が変わりつつあるのです。

露木氏 Ⓒ文藝春秋

 たとえば暴走族「関東連合」のOBグループや、中国残留孤児の二世、三世を中心に構成される「チャイニーズドラゴン」。彼らは繁華街で常習的に暴行、傷害等の事件を起こしていました。彼らには暴力団のような明確な組織構造はないものの、既存の暴力団等と密接な関係がある者も所属している。そこで2013年、当時暴力団対策課長を務めていた私は、こうした全国に何百とある反社会的グループを「準暴力団」と位置付け、取締を強化してきました。

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 新たな反社会的集団の最たるものが、ルフィ事件の犯行グループでしょう。暴力団は「山口組」「稲川会」など組織名があり、構成員たちも「俺は◯◯組だ」と名乗っていました。しかし広域強盗事件の犯人グループは、上層部が誰だか分からず、実行犯もその都度、SNSで募集する、非常に流動的な組織です。

※本記事の全文(約9000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年7月号に掲載されています(露木康浩「警察庁長官、トクリュウと闘う」)。この記事では下記の内容をお読みいただけます。
・国葬儀の警備の難点
・岸田首相に鉄パイプ爆弾が
・温めてきた「仮装身分捜査」
・書き換えられた「犯罪の地図」
・サイバー特捜隊を創設

出典元

文藝春秋

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