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「珍プレー好プレー」の材料不足に…?

 心配された試合時間の問題も、今のところ大丈夫。検証に10分もかかるのなら影響も出るだろうが。逆にこの制度により監督の抗議がほとんどなくなったことのほうが大きな利点ではないだろうか。かつて、熱血監督と呼ばれた大沢啓二さん、近藤貞雄さん、星野仙一さんらは鬼籍に入ってしまったが、現場を預かっている時にこの制度が取り入れられていたら、個性が存分に発揮できなかっただろう。当然、「珍プレー好プレー」の材料も不足する。

 1996年5月15日、東京ドームで行われた日本ハム対西武戦でこんなプレーがあった。西武・森博幸が放った打球が右中間に飛び、フェンスオーバーかと思われたが打球がグランドにはね返ってきた。これがスタンドインしてからなのか、フェンス上部に当たったのかが難しい判断だった。審判団が集まり長い協議の結果、判定は「3塁打」。エンタイトル2塁打でも、本塁打でもなく間を取っての3塁打。現在だったらあり得ないジャッジだが、こういう「アナログ判定」は個人的には好みだ。

 試合前のスターティングメンバー最終確認が、両軍監督と審判団によって行われる。その際、監督と審判がしっかり握手して信頼感を高め合う。これは、見ていてとても良い光景だ。また、試合中のリクエストで失敗した監督が審判に対して手を挙げ「了解!」のポーズを取るのも清々しい気分にさせる。何か心に詰まったまま試合を進めるより、お互いを敬うことで、それがプレーする選手にも伝わり、高いパフォーマンスを発揮できる。

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試合前のメンバー最終確認 ©中川充四郎

 審判も緊張感を持ち続けて判定するのでかなりの激務だ。もちろん、間違いもある。このリクエスト制度導入で、誤った判定をした場合は査定に影響するという。まあ、職務なのでやむを得ない。試合をテレビ観戦していて、球審の個性(クセ)を見るのも面白い。高め、低め、外角、内角それぞれのストライクゾーンに個性が出る。よく、判定が甘いとか辛いとか表現するが、これは投手から見たもの。前者が投手有利で、後者は不利になる。

 2010年まで審判部はセとパに分かれていたが、11年から完全に統合された。それまで巷間言われていたのが「セは甘く、パは辛い」。これにより、パの投手は技術が上がり、好投手が多い理由とも。ただ、甘い辛いより「ストライク」のジャッジを早く示して欲しい。ゆっくりと、タメながらのコールは腰が砕けてしまうので。

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