――そこで親に対して反発するということはなかったんですか?

波崎 なかったです。ただ、ずっと母から言われた言葉が頭の中をぐるぐるしていました。

 負の感情を表に出すことが苦手なのもありますが、怒りの感情って誰も幸せにならないなって思うんです。人の言葉に悲しくなることはありますけど、「なんで、そういうこと言うの!」みたいに怒ることはないです。

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 だって相手はそういうふうに思っちゃったんだから、受け入れるしかない。周りからも「本当に怒らない人だね」と言われます。

 

「大学に行けなくなったことは親に言えなくて」メンタル不調を誰にも相談できなかったワケ

――なるほど。大学に通えないとは具体的にどんな感じだったんですか。

波崎 朝起きたいのに、身体が動かなくて。ベッドと身体が一体化しているみたいな感覚です。学校には何とか3限、4限から通っていたんですが、途中からそれも行けなくなりました。でも大学に行けなくなったことは親には言えなくて「行ったよ」と嘘をついていたり。

 心療内科にも行ったのですが、母には黙っていました。ただ、もらった薬が見つかってバレて「何飲んでるの?」って言われましたね。嫌な顔をされることがわかっていたので、内心すごくびくびくしていました。

――親以外の誰かに相談しなかったんですか?

波崎 当時の私は誰かに相談することができなかったんですよね。相談するということは、相手に時間を使ってもらうということで、その分の対価のようなものが必要だと考えていました。

「みんな優しいから何も言わないだけで、本当は何か求めてる」なんて思っていました。今考えると少しひねくれていますね(笑)。

 

 そんな私に対して、親友は「私はあゆが好きだから話を聞きたいし、気にしたいし、これからもずっと大事だよ」と伝えてくれました。1回だけでなくて、何回も何回も言い続けてくれたんです。

 5年くらい経ってから、やっと「そうなのかもしれない」と思えるようになって。私の考え方が変わるまで、毎日ラインで体調を気にしてくれてたり、これからどうしたらいいか一緒に考えてくれたり、本当に支えられていましたね。

 親友と出会えたことは私の中での大きなことで、私自身の成長にも繋がりました。

撮影=杉山秀樹/文藝春秋

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