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流産
何度目かの夫との口論の際、とうとう夫は浮気していることを認めた。わかってはいても、実際に認められるとそのショックは思いのほか強かった。アヤ子は食事ものどを通らなくなっていたが、それでもやがて生まれてくる子のために夫の気持ちを取り戻そうともがいていた。しかし夫は相変わらず外泊をし、アヤ子に浮気していることを告白したことで気が楽にでもなったのか、それまで以上に堂々と女の所へ行くようになってしまった。
そして6月。アヤ子は流産してしまう。
それでもアヤ子は夫に愛想をつかすこともできず、なんとか夫の心を取り戻そうと懸命に努力をしていた。流産の傷も癒えていないアヤ子に、夫がいたわりを見せることはなかったという。
6月11日、珍しく家にいた夫に、今日こそは女のことを聞いてみよう、そう思いながらも言い出せずに時間だけが過ぎていくうち、アヤ子は思い当たる。
たとえ今日、話を聞くことができたとしても、それはきっと私が求める言葉と違う。私を捨てて女の所へ行く気ならば、それならば、いっそ──。
