「前経営陣が決めたことをすべて洗い直した。Faster(より早く)とMore(より多く)が再建策のキーワードになる」(エスピノーサ新社長)

 2025年3月期決算で6709億円もの最終赤字を出した日産は、仏ルノーから資本を受け入れた1999年以来の危機に立たされている。その再建を委ねられたのが新社長のイヴァン・エスピノーサ氏(46)だ。6月半ば、日産問題を追及してきたジャーナリストの井上久男氏が、エスピノーサ新社長に単独でインタビューし、本当に再建できるのかを問うた。

エスピノーサ新社長は経営のスピードアップを重視する ©文藝春秋

スピードアップにこそ価値がある

 冒頭の発言のとおりエスピノーサ氏は経営のスピードアップを主眼に置いているが、具体的にはどのような改革から始めたのか。

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「経営陣とマネジメント層を20%削減した。会社でリストラをする以上、まずはトップ層から行うということだ。この結果、一人の人間が幅広く責任を持つようになり、意思決定が早くなった」

 執行の最高意思決定機関である「経営会議」も月1回から月2回に増やしたという。

「急速に変化する世界情勢を考えればスピードアップにこそ価値がある。今の日産には無駄にする時間はない」

1999年に「リバイバルプラン」を発表したカルロス・ゴーン氏 ©時事通信社

 スピード経営はカルロス・ゴーン元会長も得意としていた。彼が日産を再建するために打ち出したのが「日産リバイバルプラン」(1999年発表)だった。エスピノーサ氏がメキシコ日産に入社したのは2003年。当時の危機は体験していない。