真正面から訴えたところで、若者世代には届かない
「日本という比較的裕福な国に生まれながら、生きることに苦しむ若者が多いことが不思議で……。冒頭とラストを先に固め、自由度の高いインディーズスタイルで一気に制作しました」
ただ、“闇を抱える若者が増えたのは日本の社会構造に問題がある”と真正面から訴えたところで、一番届けたい若者世代には届かず、ただの自己満足に終わってしまう。だからこそ本作は「映画業界の裏面を暴くエンタメ」だと言い切る。
「映画はすでに、一部の意識が高い人のための芸術に変わってきていますが、それでも楽しく観てもらうことで、ひょっとしたら何かを考えるきっかけになるかもしれない」
自分がやりたいことをやるのか、それとも売れるものをつくるのか、という問題も難しい。「実際お金になるとわかったら、それを手放せない人もいます。それぞれの立場で揺れ動く大人たちの姿も描いているので、大人にも若者にもぜひ観てほしいです」。
うちだ・えいじ 1971年、ブラジル・リオデジャネイロ出身。TV番組の制作や「週刊プレイボーイ」記者を経て、2004年『ガチャポン』で映画監督デビュー。ドラマ「全裸監督」(19年)を経て、『ミッドナイトスワン』(20年)を発表し、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。近作に原作、監督、脚本を務めた『マッチング』(24年)、監督作『誰よりもつよく抱きしめて』(25年)など。
INTRODUCTION
数々の話題作を生み出してきた内田英治監督が原案・監督を担う意欲作。主演は内田作品への出演が3回目となる北村有起哉。ヒロインは、2025年度後期の連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK)に出演が決定している円井わん。脇を固める俳優陣にも個性的なメンバーをそろえ、自由であることがウリのインディーズスタイルで映画界の裏側をリアルに表現している。
STORY
家族を顧みず、いつか映画監督になることを夢見る助監督・野島は、貧困のヤングケアラーでありながらも成功したARISAの自伝小説の映画化に取り組んでいた。ところが、周辺で話を聞くうちに、彼女に“ある疑惑”が浮かび上がる。ARISAは悲劇のヒロインなのか、それとも犯罪者なのか──? 名声を気にして理想論を振りかざす監督、もめ事を回避したいプロデューサーらが真実を追求する野島に圧力をかけてくる。やがて疑惑の火は家族をも巻き込み、野島の日常が崩れ始める……。
STAFF & CAST
原案・監督:内田英治/脚本:まなべゆきこ/出演:北村有起哉、円井わん、岩崎う大(かもめんたる)、大山真絵子、中心愛、片岡礼子/2025年/日本/108分/配給:KADOKAWA/©2025「逆火」製作委員会
