2億8000万円にのぼる背任容疑で、岩本絹子元理事長が逮捕・起訴された東京女子医科大学で新たな問題が発覚した。昨年3月、警視庁による家宅捜索で問題が発覚して以降、新たな理事長の選任などを進めてきた同大学だが、理事の一人で、木下グループ社長の木下直哉氏が、改革派の教授に圧力をかける封書を送っていたという。ノンフィクション作家・森功氏の取材で分かった。
「有志7人衆」による署名運動への圧力
東京女子医大内で、岩本体制に反旗を翻し改革を進めてきたのは、「有志7人衆」と呼ばれた7名の教授陣だ。中心となったのは、サントリーホールディングスの新浪剛史会長の実弟である心臓血管外科の新浪博教授。7人衆はこれまで、大学の理事や監事らに対して、岩本氏の問題について質問書を送付したほか、<本学理事長の辞任もしくは解任を含む理事会への要求>と題する署名集めも実施してきた。新浪氏が語る。
「署名運動が各医局長や病院長に漏れ、『サインなんかしちゃ駄目だ』と圧力がかかりましたが、署名は日増しに増えていきました」
7人衆の署名運動は広がりを見せ、2024年6月25日時点で学内1430人、卒業生587人の合計2017人の賛同が集まった。一方で、こうした行動を封じ込めるような動きもあった。そのひとつが岩本元理事長の意を受けたと思われる、2023年4月に理事に就任した木下直哉氏の動きだ。木下氏は2024年7月3日付で、7人衆の一人である消化器肝胆膵外科の本田五郎教授に配達証明付きの封書を送っている。
<貴殿らは「有志一同」などと称しておられますが、その実態は、本学のことなど何も考えておらず、揚げ足取りのような批判を繰り返すだけの無責任な集団にすぎない>

