東京女子医科大学が研究費などの税務申告をめぐり、東京国税局からおよそ2億5000万円の申告漏れを指摘されていたことがわかった。追徴課税額は過少申告加算税を含めおよそ5500万円とみられている。
文春オンラインでは、これまで女子医大をめぐる“疑惑のカネ”について報じてきた。また昨年7月には、東京国税局の“最強部隊”といわれる課税第二部資料調査課「通称:リョウチョウ」が女子医大の税務調査に着手したこともスクープしていた。
今回の追徴課税はリョウチョウの調査の末に行われたものと見られるが、果たして、女子医大が抱える闇とはどれほど深いのか。“疑惑のカネ”を詳細に報じた当時の記事を再公開する。(初出・2022年7月19日、年齢、肩書は当時のママ)
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都民の命を守る東京女子医科大学病院が、いま存続の危機に立っている。医師・看護師らの大量退職が続き、毎月2億円を超すペースで赤字が出ているのだ。
この危機を招いたとされる“女帝”理事長の公私混同、そして元宝塚スター親族企業らが関係する「疑惑のカネ」を徹底追及する──。(全3回の1回目)
※週刊文春2022年4月28日号(4月21日発売)に掲載された記事に、取材を追加して再構成
若い看護師たちの大半は辞職、研究費は4億円以上カット
「入職した当時、女子医大の看護師であることが誇りでした。でも今はここで働いていることを恥ずかしくて言えません」
こう嘆くのは、キャリア20年あまりのベテラン看護師である。今後、病院の運営が維持できるか、大きな不安を抱いているという。
「自分が育てた若い看護師たちの大半が、辞めてしまったからです。将来に希望が持てないとか、労働条件や経営方針に納得できないという理由でした。経営陣が、働く職員を大事にしないことが報道で知れ渡っているので、求人を出しても、希望者が全然集まりません」
創立120年を超す名門である東京女子医科大学(東京・新宿)。中核を担う東京女子医科大学病院は、心臓、脳、消化器、腎臓移植などの分野で国内トップクラスの手術件数を誇り、日本の医療をリードしてきた。他の病院では対応できない難しい症例を引き受け、都民の命を守る最後の砦でもある。
また、唯一の女子大医学部として華やかで自由な校風で知られ、全国から優秀な医師や看護師が集まっていた。
大学病院の雄とも言える東京女子医大が、いま別の組織のように変容しているという。同大の30代医師がこう打ち明ける。
「利益に直結する病床稼働率を1日2回も報告させ、各診療科を競い合わせるようになりました。そのため、必要のない入院を勧めてしまう若手医師もいます。一方で、コスト削減の一環として、研究費が4億円以上カット(2019年から2020年)され、医学文献のデータベース使用料も有料化されました。大学病院ではあり得ないことです」
1年で医師が97人減、看護師は162人減「いつ事故が起きても不思議ではない」
その影響から医師の離職が急増しているという。同大・教授が続ける。
「経営方針に反発して、優秀な人ほど女子医大に見切りをつけるように去っていきました。凄いペースで医者と看護師が辞めているので、これまでの医療の質は保てない状況です」
女子医大病院では、この1年間で医師が97人減(859人→762人)、看護師に至っては162人減(1195人→1033人)となっており、これが、現場に深刻な負担を与えている。
「夜間の時間帯は、特に人手不足でいつ事故が起きても不思議ではありません。若い医師を丁寧に指導するのが、女子医大の伝統でしたが、その余裕も無くなりました」(前出の30代医師)
看護師不足のため、閉鎖された病棟もある。今年度は許可病床の約1200床中、運用できるのは800床程度しかない。早速、この影響は経営に大きく響いている。4月と5月は、連続して2億円を超す赤字が出ているのだ。
すでに始まっている、診療現場の崩壊。このような状況になった背景には、女子医大を支配する一人の“女帝”の存在があった――。