波乱の映画人生を語った『有馬稲子 わが愛と残酷の映画史』(筑摩書房)が出版された。映画評論家・樋口尚文氏のインタビューに応える形で、自身も筆を執った。
今年4月で86歳。宝塚歌劇団を経て、1951年、『寶塚夫人』で映画デビュー。日本映画の黄金期である50年代に小津安二郎、内田吐夢、今井正、小林正樹ら巨匠監督とタッグを組んだ。出演作は70本以上にも上る。
「映画時代にいろんな目に遭いましたからね。そのことをいっぺん書きたいと思っていました」
一番厳しかったのは『夜の鼓』(58)の今井正監督。
「『待って』というセリフがあったんですが、全然オーケーが出なくて、1週間カメラを止めてしまいました。100回くらいやった後に、『3つ前のがよかった』とか言うんです。こっちはパニクっていて、覚えていない。3日目か4日目にはホテルから飛び降りようかと思うくらい追い込まれました」
私生活では萬屋錦之介、実業家と二度結婚したが、子供はいない。本では結婚生活のほか、20代に経験した17歳年上の映画監督との不倫、堕胎についても告白している。
「7、8年ほど関係は続きましたが、あれは失敗でした。私、子供が欲しかったんです。年を取るにつれ、だんだん腹が立ってきました。今でも許せません」
本の刊行を記念して、特集上映「女優 有馬稲子」が7月7日から20日まで東京・シネマヴェーラ渋谷で開催される。
INFORMATION
特集上映「女優 有馬稲子」スケジュール
http://www.cinemavera.com/schedule.php?id=208