野坂弘さん

 演劇ユニット「地平線」を主宰する野坂弘さんが、アメリカの劇作家マレー・シスガルの戯曲「タイピスト」を企画・演出する。

「僕たちは生活にスピードを求められ、日々をやり過ごすことで精一杯で、人生の目的を見失ってしまいがちです。『タイピスト』の初演は63年ですが、いまに通ずる普遍性があり、テーマの間口の広さと深さが魅力だと思います」

 本作は、60年代のアメリカでタイピストとして働く男女の物語だ。母親と暮らしながら家計を支えるシルヴィアはひそかに結婚に憧れ、ポールは夜学に通いながら法律家を目指している。

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 理想と現実の乖離に葛藤しながら日々を懸命に生きようとする労働者の姿をユーモアと皮肉たっぷりに、愛ある視点で描き出す。

「我々とは異なる時代に暮らしている彼らの生き方に、僕は愚直なくらいまじめに取り組みたい。現代と劇世界との接点を見出し、俳優の現在形の身体を媒介させることによって、作品と私たちの生活を連結させることが、時間も場所も超えた作品を上演する意義だと思うからです」

INFORMATION

『タイピスト』
7月12日~16日、劇場「サブテレニアン」(東京都板橋区)にて公演。
チケット予約・問い合わせ tel 050-5329-2986
https://chiheisen-typists.tumblr.com/