毎年のように俳優やラッパーなどのアーティストがドラッグをめぐって逮捕されていく芸能界。一体、何が起きているのか。長年、薬物取材を手がけてきた「週刊文春」エース記者が紐解く芸能界の薬物汚染の実態。case.8は人気ロックバンドのボーカル「I」。(初回は#1へ)

 沢尻エリカが心酔していた“クラブ業界の女帝”A子。ドラッグ密売所「世田谷ハウス」を根城にしていた安藤辰信(仮名)――。違法ドラッグを巡る渋谷のクラブシーンにおいて、避けては通れないもう一つの存在がある。

 有名クリエーターの山川俊(仮名)。

人気ロックバンドのボーカル「I」が“信奉者”

 一流私大を卒業後、海外放浪を経験した山川は、得意の語学とコミュニケーション能力を駆使し、世界各国のアーティストとの人脈を構築した。帰国後はクリエーターとして活躍。週末はクラブイベントを主催し、長らくクラブシーンでは“教祖”として崇められていた。山川がオーガナイズするクラブには、若手人気俳優や現役女優など、多数の著名人が訪れ、華を添える。彼らは、音楽とアートを愛する型に囚われない山川のライフスタイルに憧憬を抱いていた。

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 人気ロックバンドのボーカル「I」は、“信奉者”の一人だった。数年前に一世を風靡し、国民的ミュージシャンとして名が知られた後も、変わらず忠誠を誓うのだった。

 だが、“教祖”には裏の顔があった。彼の行く先々には、ドラッグの陰が常に纏わり付くのだ。それはアートな日常を彩るアクセサリーのようなものだった。まるで流行のファッションを身に纏うかのように、ドラッグに耽溺する日々。山川の知人が打ち明ける。

「山川さんはとにかく人脈が広い。海外のアーティストや俳優なんかと普通に仲良く遊んでいて、それをSNSにアップしていた。海外にカブれた彼にとって、コカインは日常風景の一つ。彼や彼に憧れを持つ周囲の人間は、当たり前のようにクラブ内で吸引していました。トイレ内にあるマウスウォッシュの下にコカインを隠しておいて、1時間ごとに吸引したり……。でも、山川さんとコカインを一緒にやってグループの輪の中に入れたときは『仲間になれた』と不思議な優越感を感じました。『世界的に活躍している山川さんがやっているんだから大丈夫だよな』って」

憧れから薬物使用に踏み出すケースも ©fotoco

 アートの衣を纏った山川が放つ空気感は、違法行為の垣根を著しく下げていた。

VIPエリアの奥にある男女兼用トイレで……

 19年12月某日の深夜、渋谷のクラブ「Q」のフロアは熱狂が渦巻いていた。この日、山川は一大イベントの“年末パーティー”を主催。同日、「週刊文春」記者はIが「Q」に現れるという情報を入手し、店内に目を光らせていた。

この続きでは、山川のパーティー、捜査当局が行ったボーカル「I」への家宅捜索など薬物捜査の詳細を4500字近くにわたって記している〉

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