レジェンドとの共演

リム 『スタントマン』ではフィリップ・ンやセシリア・チョイなど『トワウォ』の仲間と再共演でしたし、気心も知れていてやりやすかったのでは?

テレンス それも大きかったですね。セシリアは実際、僕のパートナーでもあるので、それもやりやすかったです。フィリップとは『トワウォ』の前はまったく面識がなかったんですが、撮影を通して深い友情が生まれて、『スタントマン』で再共演した時は、もう暗黙の了解のようなものがありました。

フィリップ・ン ©2024 Stuntman Film Production Co.Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

リム 『スタントマン』の中で、実は僕が一番感動を覚えたのはトン・ワイさんの主演です。すでに伝説的なアクション監督ですが、彼との共演はどうでしたか?

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テレンス 僕にとっても、彼はまさにレジェンドです。今回初めて彼と芝居をしましたが、本当にとても優しい先輩でした。

 準備段階の本読みのときや、現場に入ってからの撮影のときも、彼はいつも現場に一番早く来ていました。彼とリハーサルをしたときも、とてもオープンマインドで、いろいろな意見を交換することができました。

トン・ワイ ©2024 Stuntman Film Production Co.Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

 ただ、アクションに関しては、やはり彼なりのこだわりがしっかりあって。この映画の監督は長編デビュー作でもありますし、関わっているスタッフも若い人が多くて、彼と比べると経験的に不足している部分がありました。

 しかし彼は、気さくにアクションのデザインやワイヤーのセッティングなどいろいろなアドバイスをしてくれました。

トン・ワイ(左)とテレンス・ラウ ©2024 Stuntman Film Production Co.Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

 彼は僕と話すのが好きだったみたいで、僕もファンのような気持ちで過去の作品についていろいろ質問したら、いつも丁寧に教えてくれました。たとえば、「こういう動きを見せたいなら、こういうふうにワイヤーをセットした方がいいよ」といった実践的なアドバイスもしてくれました。

今の香港映画について思うこと

リム この映画では、昔の香港映画への深い感情が描かれていますよね。作中には「香港映画はもう昔の黄金時代のようには戻れない」というセリフもありました。実際、今の香港映画についてどう思いますか?

テレンス 今の香港映画の本数は、昔の80年代や90年代と比べると本当に減ったと思います。昔は年間で軽く100本以上は作られていたんですが、今は……。オフィシャルな統計ではないですが、今年の上半期は、僕の知っている限りで言えば、数本くらいしか撮影されていないと思います。

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 今の観客が求めているものも、昔とはだいぶ違ってきている気がします。観客は昔よりもずっと厳しくなっているかもしれない。

 映画はビジネスでもあります。昔は製作費を回収するのが今ほど難しくなかったから、資金も集めやすかったのかもしれない。でも今はそうはいかない。だからこそ、僕たち作り手はより質の高い作品を作らなければ、観客を満足させられないと思います。