かなり驚いたが、現在では参院選で「日本人ファースト」を掲げて支持率を上げているという。ただ、その発言の数々は“歩くファクトチェック”と言っていい。

人間の負の感情を利用したバッシング

 公示後の第一声では「安い労働力だといって野放図に入れていたら、日本人の賃金が上がらない。いい仕事に就けない外国人が集団で万引とかをやって、大きな犯罪が生まれる」と発言(東京新聞 2025年7月4日)。しかし警察庁などによると、日本人を含めた摘発人数に占める外国人の割合は10年ほど前から2%前後で推移し、大きな変化はない。

 外国人が安い賃金で働くから日本人の賃金が上がらないというのも「賃金が上昇しないのは、長期化したデフレや非正規労働者の増加など、数十年間の複合的な問題が絡んでいる」(信濃毎日新聞 2025年7月13日)。

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 そもそもこれまで「移民」という言葉を避けつつ、しかし「労働力」は欲しいという論理で技能実習生制度など“裏口のドア”を開けてきた。こうしたやり方はきちんと外国人の人権と向き合ったかどうか?

 人間の負の感情を利用したバッシングは常にある。先日、国が2013~15年に生活保護費を引き下げたのは「違法」という最高裁の判決があった。当時、引き下げ前はリーマン・ショック後の世界的大不況の影響があり、生活保護の利用者が急増した。

《一般世帯の暮らしも上向かないなか、生活保護制度や利用者を狙った「生活保護バッシング」が過熱した。》(朝日新聞 2025年6月28日)

 そうした状況下で迎えた12年の衆院選で、野党だった自民党は公約に「給付水準10%引き下げ」を掲げて大勝。政権に返り咲いた。

 弁護士の三輪記子さんは日刊ゲンダイのコラム(2025年7月1日付)で次のように解説していた。生活保護の受給は憲法25条(生存権の保障)に由来するもので、全て個人の尊厳(憲法13条)は「生きてこそ」。そのうえで当時の自民党は「生存権」を削るような「公約」を掲げたのだと。今回の判決がそれにダメ出しをしたのだと。